濵本智己
JWTジャパン Communication Design Director
大学卒業後、デロイトトーマツコンサルティングに入社。ビジネスコンサルタントとして、公共交通機関や家電量販店、食品メーカー等のコンサルティング業務に携わる 。2007年に外資系広告代理店に入社後は、ストラテジックプランナーとして、日本マクドナルド、BMW MINI、NIKEやPUMA等のコミュニケーションプランニングを担当する。2016年より、ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパンに参画。戦略のわかるクリエイティブとして、コミュニケーションストラテジーからクリエイティブまでを一気通貫してデザインするハイブリッド型プランナーとして活躍。
昨年のSXSWは、「VR元年」と言われるほどVRフィーバーだったそうです。しかし僕の見る限り、今年の最重要テーマとして、「AI(人工知能)」および「Machine Learning(機械学習)」は外せないでしょう。そのくらい、SXSW2017ではこれらをテーマにしたセッションが数多く見られます。
テクノロジー業界にはAR、VR、MR、AI、IoT等々、数多くのバズワードがあります。ともすると、我々はこれらを横並びで捉えてしまいがちです。
しかし今回の視察を通して、AIの持つ影響力はその他とは比べものにならないインパクトがあることを感じさせられました。解釈が正しいかどうかはさておき、例えばARやVRという技術を「エンターテインメントコンテンツの可能性を広げてくれるツール」と捉える人は少なくないでしょう。とかく広告・コミュニケーションに携わる人間はそうした理解をしがちです。
しかし、残念ながらAIはそんなに扱いやすいツールではありません。明らかに他とはレイヤーの違う概念です。僕はエンジニアではありませんし、デジタルの専門家でもありません。ただ、実際には多くの人々が僕と同じような立場だと思います。そんなテクノロジー初心者の僕が、SXSW初日を通して得た、AIを取り巻く未来についての2つの気づきを本日は共有できればと思います。
IoTデバイス時代のUIは「音声アシスタント」
ひとつ目の気づきは、近い将来、音声アシスタントが人々の行動やコミュニケーションストラクチャーを劇的に変えるだろうという点です。今、我々がビジネスの現場でAIの活用について語るとき、それはおそらくチャットボットの活用がメインになるのではないでしょうか。
チャットボットの概念は、AI(人工知能)を活用することで、まるでリアルな人間とインタラクションしているかのような高度なテキストコミュニケーションを実現可能にすることです。しかし将来的には、その様相すら音声アシスタントの進化によって一変することになるかもしれません。
パーソナルコンピューティングの時代のUI(ユーザーインターフェース)は、キーボードとマウスでした。そしてスマートフォン時代の訪れと共に、それはタッチスクリーンへと変わりました。ではIoTデバイス時代のUIは一体どうなるのでしょう?セルフドライビングカーのUIはいったいどんなものになるか想像してみてください。おそらくそれは音声アシスタントでしょう。
Google、Apple、Amazonなど、主要なプラットフォーム企業による音声認識技術の覇権争いはすでに始まっています。これが何を意味するかというと、人々は何か調べものをするために、もはやGoogleに検索ワードを打ち込まなくなるということです。そして、この音声認識技術を成長させるテクノロジーこそがAIというわけです。つまりAIは、現在のデジタルマーケティングにおいて前提となっている人々の行動やコミュニケーションの基本構造を、根本的に覆す力を持っているということなのです。