350万円の借金をして臨んだ自主映画が商業デビューの道を開いた(ゲスト:中野量太さん)【後編】

自主映画のときは350万円の借金を・・・

中野:僕の中では簡単で、自分で金出してつくるのが自主映画で、ちゃんと金を出してもらって、それで利益を出そうとする目的で撮るのが商業映画。それだけですね。

中村:企画書を東宝みたいなところに出すんですか?

中野:僕の場合、商業はやろうと声をかけていただいたので。判断するのはプロデューサーで、この映画をつくって、はたして商売になるか。なるのであれば企画は通るし、劇場にかかれば商業映画になる。いくら企画があっても、いつまで経っても商業の目線に乗らなければ、みんな自分でお金払って撮りますと。それは自主映画、インディーズ映画です。

権八:自主映画のときは何人かで出し合うんですか? それとも監督ご自身のお金で?

中野:色々なタイプがあると思いますが、僕が『湯を沸かすほどの熱い愛』の前に撮った『チチを撮りに』にという自主映画があるんですけど。

権八:これも色々な賞を獲られてますね。

中野:これは40歳手前で最後に勝負しないとマズイと思ってつくって、賞を獲りました。借金をして撮ったんです。

澤本:借金したんですか?

中野:もう1人プロデューサーがいて、その人と2人でお金を出し合ってつくりました。

権八:自主映画をつくるときって、具体的にどれぐらいお金かかるんですか?

中野:僕は勝負したかったので、制作費は800万円ぐらいかけました。プロデューサーが多めに出してくれましたけど、僕も350万円ぐらい借金して出して。勝負したらそれを評価していただいて、今回に繋がったというか。

中村:それも国内外で14の賞を獲って。

澤本:勝負とおっしゃったけど、僕らは仕事でCMをやってると、自分でお金を一銭も出さない。だいたいブーブー文句言いながらやってるけど、それじゃいけないね(笑)。

中野:本当に『チチを撮りに』のときは逃げられないし、自分が面白いと思うものを貫いたというか。今思えばそれでダメだった場合をそんなに考えてなかったんだろうなと。ただ借金だけが残って、どうしてたんだろうなと思います。

中村:映像の世界はずっと勝負ですよね。

中野:だから今回の『湯を沸かすほどの熱い愛』はお金を出さなくてよかったことが一番うれしいです。

一同:(笑)

権八:ちなみに、自主映画『チチを撮りに』で350万円借りて、もう返せたんですか?

中野:友達に借りたんですけど、それは返しました。半分は今回のギャラで返しました。

権八:よかったですね!

中野:よかったです。だから、今は借金ないです。親からちょっとあるぐらいです(笑)。

中村:今回の『湯を沸かすほどの熱い愛』で言うと、テーマ設定、心のメモがあったと思うんですけど、それはどういうものですか?

中野:一言でいえば、「家族とは」ですね。家族とは何だろうということはずっとテーマにしていて、それは今でも考えてるし、そこに答えは絶対にないと思うんです。これだけ家族があって、1個これが家族なんだよ、という答えはなくて。でも、家族であることの喜び、1つひとつの家族の良い形はあるんだろうなと思います。

今回も複雑な人達の集まりで、これを家族というのか?と言われれば、決まりはないし、僕は家族だと思います。そういう「家族とは何か」というのを今回もずっと考えながら、僕なりの家族像をつくっているつもりです。

次ページ 「脚本を書くときはタイトルと人物の名前を先に決める」へ続く

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