350万円の借金をして臨んだ自主映画が商業デビューの道を開いた(ゲスト:中野量太さん)【後編】

脚本を書くときはタイトルと人物の名前を先に決める

中村:宮沢りえさん演じる主人公・双葉のモデルになってる人はいるんですか?

中野:よく「あなたのお母さんがモデルですか?」と言われますが、そんなことはないですね。僕は6歳で親父が亡くなったので、ずっと母に育てられました。そうやって形づくられている自分だから何かしらは出ているだろうけど、「これが僕の母です」なんていうのは全く違うなと。

でも、どこかで知ってる人なのかもしれないですね。僕の母親とは言いませんが、“強い母”の像は僕の中にあって、そういうところは使ってるだろうし。逆に自分の弱さみたいなものを投影した人物からスタートすることもある。友達にいた人からスタートすることもあるだろうし、種はあるんだと思うんです。そこから肉付けして、一人の人間をつくっているんだと思います。

澤本:映画のテーマソングが。

中野:きのこ帝国は僕が好きだったので。

澤本:僕らもきのこ帝国好きなんですよ。だから、「あ、きのこ帝国だ」と思って。

権八:僕も一度CMで使わせていただきました。

中野:彼らは当時新人で、僕は自分と同じ立場の人とやりたかったんです。今から伸びていく人とやりたくて、きのこさんがちょうどメジャーデビューをしたぐらいで、好きだったのでオファーを出して。やるのであれば、僕は1からやりたかったんです。ありものは絶対に嫌だったので、脚本から読んでもらって、曲をつくってくれと。現場にも来てもらって、最後は秒単位でこれお願いしますと。

澤本:脚本書くときって、タイトルを先に考えるんですか? それとも後ですか?

中野:僕は必ず頭でタイトルを付けるんです。最初にタイトルを考えてから、このタイトルいいな、となったほうが世界観が見えるというか。これが『銭湯物語』というタイトルだったら、全く違う話になりますよね。『湯を沸かすほどの熱い愛』、あ、良いタイトル思いついたとなったら、書きだせるというか。

権八:ということは、プロットもないままでタイトルが先ですか?

中野:もちろん最初に何となくの話はあって。書きはじめる前に必ず主人公の名前を決めるのと一緒にタイトルも絶対考えます。後付けはしない。

澤本:主人公の具体的な名前も冒頭で決めちゃうんですか?

中野:はい、最初で決めます。

澤本:今回の名前は何かしら思いがあるんですか?

中野:あまりないんですけど、お母さん以外の人はサンズイなど水に関係してるんです。安澄、君江、一浩、鮎子も魚だし。お母さんだけ山の双葉と葉っぱにしたんですけど、そのぐらいですね。

次ページ 「脚本の中で登場人物が動き出すとうれしくなる」へ続く

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