コピー100本ノックの意味
このコラムはコピーの書き方講座ではないので詳細は割愛しますが、みなさんも新人コピーライターが先輩から「コピーの100本ノックを受ける」という話を聞いたことがあると思います。まずコピーを100本書く宿題が出て、翌日にまた新たな100本を書く宿題が出るといった具合です。
この100本ノックは、たくさんの視点を持つための訓練と言えます。もちろん発想の幅を広げてアイデア違いで100本書ければ、とても素晴らしいことです。でも、そこまでアイデアに違いが出せない場合、先輩からこんなアドバイスを受けることがあります。
「自分の身近な人の顔をとにかくたくさん思い浮かべて、その人たちの気持ちになって、商品やブランドのコピーを考えてみたら?そうすればすぐ100本くらいコピーが書けるよ」。
実際の思考は、次のようになります。
自分の親だったらこの商品をどう考えるだろう、職場のあの人だったらこの商品をどのように使うだろう、あのタレントだったらどんな時にこの商品を欲しいと思うだろう、歴史上の人物だったらどんな感想を述べるだろう。
さらに、漫画の主人公だったら、宇宙人だったら、あそこで信号を待っている人だったら、小学校の時の同級生だったら、未来から来た人だったら、といろいろな顔を思い浮かべることで、次々とコピーが書けていくから不思議です。
自分視点=企業視点、他者視点=顧客視点
これは、それまで「自分だけの視点」、つまり一方的な視点でコピーを書こうとしていたのに対して、「できるだけ多くの人の視点」、つまりコピーを受け取る相手を想像することで可能になった、表現の幅と言い換えることができるでしょう。
強引に思われるかもしれませんが、新人が最初に陥る「自分だけの視点」とは、マス・マーケティングのあり方に当てはめれば、一方的な「企業視点」だと言えるでしょう。それに対して「できるだけ多くの人の視点」とは、受け手の立場に立った顧客視点と言うことはできないでしょうか。
4マス媒体に加えてインターネットやソーシャルメディアが発展した現在、広告コミュニケーションは一方通行のものではなく、双方向のコミュニケーションが可能になっています。
普段から、受け手である普通の人の気持ちになって商品やブランドを考える訓練を積んでいる広告クリエイターは、実のところ、顧客視点で物事を考えるプロということができるかも知れません。
考えてみれば、広告クリエイターは生活者に広告コミュニケーションを届ける最終的な立場にあり、顧客に一番近い存在ということもできます。近年の環境変化により、広告クリエイターの守備範囲は、メディアを通じた広告コミュニケーションだけでなく、ユーザーのリアルな体験設計や、顧客コミュニティとのコラボレーションなど、今まで以上に拡がっています。
広告クリエイターこそ、顧客視点のプロ
企業目線を離れて、相手の立場、顧客の立場で物事を考える姿勢が問われる時代です。現在、顧客視点のプロジェクトを推進しているのは企業担当者の場合が多いのですが、広告クリエイターこそ、企業のファンと一緒に取り組む「顧客視点のコミュニケーション設計」に向いているのかも知れないのです。
このコラムをお読みの広告クリエイターのみなさん、ぜひとも新しい可能性に挑戦してみませんか。
これからの企業発展には顧客との関係を深めることが必要です。『顧客視点の企業戦略 -アンバサダープログラム的思考-』は、企業とファンが一緒になって課題を解決したり、マーケティング活動を行ったりする方法論や事例について解説した書籍です。今までのマス・マーケティングに加えて無理なく実行できる点にも特徴があります。この機会に是非ともお買い求めください。
はじめに:「新たなる現実」を受け入れて、次へ向かう指標としての顧客視点/第1章:顧客視点がないと「マーケティング」ではない/第2章:マーケティングを顧客視点で組み替える/第3章:企業の目的は「顧客を創造する顧客」の創造である/第4章:顧客と一緒にマーケティングする/実践レポート:アンバサダーの体験設計(上田怜史)/第5章:アンバサダーが企業にもたらす変化/第6章:顧客視点経営がビジネスを変える