アカツキがUXにこだわる理由
—ゲームアプリのプロモーションにおけるUXの重要性について、どのように考えていますか。
立山:もともとUXやUI(ユーザーインターフェース)はサービス開発の現場でよく使われてきた言葉だと思いますが、最近はマーケティングの現場においても”UXデザイン”は欠かせない考え方になっていると思います。
例えば、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)。顧客視点でコンテンツ・イベントを徹底的に考え実現し、コミュニケーションまで一気通貫させることで、チケット価格を毎年値上げしながらも、入園者数が過去最多を更新し続ける状態を生み出しています。また流行りの海外サービスも同様で、Uberはリムジンサービスとして最高級の体験を提供しユーザー満足度を上げ続けた後、タクシー市場に参入して一気に急成長しました。そして更なるユーザー体験の向上を目指して、Uber EATSなどを展開し拡大を続けています。
この世の中の流れから分かることは、私たちマーケターの役割は企業が届けたいメッセージを一方的に宣伝することではなく、ユーザーが本当に心地いいと思える体験をユーザー視点で実行し、改善を繰り返し、UXの質を高め、その体験による感動をきちんとコミュニケーションすることだと思っています。
モバイルの普及と共にマーケティングのデジタル化が加速し、ユーザーの傾向を数字で測定することが当たり前になった今、”数字を使って明らかにしたかったのは、ユーザーの感情である”ということに立ち戻り、UXの質を高めることに、こだわりたいと考えています。
—マーケティングにおいてUXを大切にしようと考えた、きっかけはあったのですか?
立山:約3年前、テレビCMの新クリエイティブを制作するために、初めてユーザーインタビューを実施したことがきっかけとなりました。私たちが初期に作ったCMは、今振り返ると宣伝色の強いものだったのですが、ユーザーの声を聞きながら改善を重ねた結果、獲得単価・ROAS共に大幅に改善しました。そこからサービス面だけでなく、プロモーションも含めたマーケティング全体を、UXを中心に最適化していく重要性を感じましたね。
窪田:さらにUXが重要になる背景にはアプリ市場が成熟期を迎えている、ということも大きいと思います。かつてプレイヤーが少なかった時代には、大規模プロモーションを実施してたくさんのユーザーを集め、一度遊んでもらえれば長く使ってもらえたのですが、今はユーザーの目が厳しくなり、ゲームの満足度を上げていかないと継続して遊んでもらえないのです。
—UXを大切にすることで、具体的な成果につながりましたか。
窪田:はい、ゲームアプリはリリースしてヒットした後、2〜3年で徐々に売上が落ちていくという傾向があります。そんな中で、私たちのロールプレイングゲーム「サウザンドメモリーズ」はリリースから3年が経っても最高益を叩き出しています。
昨年、サウザンドメモリーズは「リリースから1000日」「3周年」というメモリアルなタイミングを迎えたので、長く遊んでいただいている既存ユーザーへの感謝と、新規ユーザーに楽しんでもらうことを目的として豪華キャンペーンを企画しました。その際、ユーザーの声に耳を傾け、企画に取り入れることを重要視していました。
ユーザー参加型のキャンペーンを設計する際、私たちの当初の想定では、インセンティブには「普段なかなか手に入らない、キャラクター進化素材や覚醒アイテム」を提供すると喜ばれるだろうと思っていたのですが、ユーザーの声を丹念に聞いていくと「ゲーム内の人気キャラクターが当たるチケット」が欲しいということが分かりました。また、他社とのコラボレーションも、ユーザーが期待していたタイトルと実現させましたほか、感謝の気持ちとして多くの有償アイテムをプレゼントし、ユーザー満足度を高める施策を積極的に実施しました。その結果、ユーザーにとって本当に価値のある体験を提供することができ、最高益につなげることができました。
—ユーザーの声はどのように収集したのでしょうか。
窪田:今回のキャンペーンの実施前に、ニコニコ生放送のチャンネルを開設して、積極的にユーザーとコミュニケーションを図るようにしました。そこから得た声をもとに議論してたくさんのアイデアが生まれました。
また、通常時実施していることとして、ゲーム内やプロモーションKPIなどの定量情報によるユーザー感情の把握に加え、SNSやレビュー・リアルイベント等での定性的な声による感情の把握を行い、ユーザー満足度向上のために解決すべき課題の解決方法や優先付けをしています。運営チームやマーケティングチームだけでなく、カスタマーサポートチームも毎日ユーザーの声を収集して、共有し合う仕組みを組織的に作っています。
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