2001年の広報会議で、何が語られていたのか?16年前の座談会を特別公開

月刊『広報会議』は2017年5月号(4月1日発売)で、通巻100号を迎えます。そこで今回は月刊『宣伝会議』2001年10月号に掲載した、第1回の「広報会議」復刻版をお届けします。


出席者
※役職は当時
資生堂 役員待遇 コーポレートコミュニケーション本部 広報部長 鈴木奎三郎氏
日本パブリックリレーションズ協会 理事事務局長 福田清介氏
アルプス電気 広報・秘書室 理事室長 乃美元彦氏
井之上パブリックリレーションズ 取締役社長 井之上 喬氏

なぜ広報が重要なのか

—経営トップをはじめ、企業のさまざまなセクションの方々が「広報が非常に重要になってきている」という話をしています。この背景にはどんなことがあるのでしょうか。

乃美(アルプス電気):情報が企業経営に大きな影響を与える。各部門ばらばらに情報を発信すると、いろいろな面で問題が生じます。また企業戦略として、情報の“形” を統一する必要もある。当社では経理部門がIRを担当していますが、広報、営業の企画部門、宣伝部門なども定例的に会合を開き、トータル的な企業情報の一本化を図っています。

鈴木(資生堂):「会社」をひっくり返すと「社会」だし、「社会」の逆は「会社」です。表裏一体の関係にある。つまり会社とは、限りなく社会的存在なわけです。したがって、過去・現在・未来の企業の情報をスピーディかつタイムリーに発信していくことは、会社として当然の業務です。「ディスクロージャー」と「アカウンタビリティ」、つまり企業には、徹底した情報開示と説明責任があるという意味で、広報部門が重要だといわれているのです。

それから宣伝部と広報部は、組織体として分かれていたとしても、世の中にコミュニケーションしていくという点で同じです。私自身が広報部長をしながら宣伝も統括しているので、両者を分けて考えることはまったく意味がないと思っています。

乃美:しかも、トータルコミュニケーションにおいては広報部門がリーダーシップをとるべきですね。なぜなら、何かひとつ宣伝するにしても、「これはIR的にどう考えればいいか」「関係する諸部門に対してどうアプローチすればモチベーションのアップにつながるか」というように、かなり広範囲に関係する人がいるという上意概念で捉えていかなければならないからです。

—今日において広報部門に求められていることは、どんなことでしょうか。

井之上(井之上パブリックリレーションズ):グローバル化が急速に進んで、ありとあらゆることを瞬時に判断しなければならない時代です。間違っていると思ったら自ら修正して変えていく、つまり「自己修正」の機能が最も大事ですね。

鈴木:要するに広報の立場は「社内野党」でなければならないということでしょう。私も20年来、広報担当として“健全な”社内野党を自認しています。広報に対する理解と認識がない会社では野党は結局野党に過ぎませんが、きちんとした会社であれば野党の声にも耳を傾けてくれるし、評価もしてくれる。

乃美:広報は決定者ではなく情報提供者ですから、「トップに情報を提供し、的確な行動をとってもらうこと」が大事な仕事です。したがって、社内野党でありながら、一方でトップをはじめ社内外に信頼と協力関係をつくることも、とても大切。

福田(日本PR協会):それから、単に情報を提供するだけではなく、戦略的なスタンスも問われています。「レピュテーション(評価・品格)・マネージメント」という考え方を基軸に据え、従業員、消費者、アナリスト、マスコミなど各ステークホルダーに対するエネルギーの費やし方、メッセージの内容を戦略的に考えること。したがって、企業の顔であるトップがPRマインドを持ってスポークスマン活動をするのが一番わかりやすく、情報に信憑性が出てくる。そのためには定期的に、報道状況の分析を通して評価の事実を把握することが肝要です。

井之上:アメリカの企業は、海外展開の際、最初からトップがやって来て「自分の会社はこの国でこういうことをやりたい」と説明します。PR会社に対しても「文化が違うから、どういうコミュニケーションをとっていけばいいのか教えてほしい」と言う。そして記者会見やインタビューなどを通して、現地におけるレピュテーション、つまり企業品格を高めるための努力をします。このとき、広報担当者も一緒になって行う。ところが、こういったケースは日本では稀で、肝心要のところに参画できないと嘆いている広報部長さんは多いようですね。

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