世界14か国で展開する総合オンラインストアAmazon。Amazonでは、そのサイトやサービスを企業の広告、マーケティング活動の場として開発・提供を進めている。米・Amazon.comで広告メディア・マーケティングソリューション開発を専門に行う「Amazon Media Group」事業を統括するセス・デレイヤ氏に、同社が考える「Eコマースマーケティング」の概念とその展望について話を聞いた。
—Amazonは顧客第一主義を掲げている。広告ソリューション開発の際には、どのようにこの方針とのバランスをとっているのか。
広告やマーケティングソリューションの開発に際しても、顧客第一主義の考えが常に念頭にあることに変わりはない。顧客にとって魅力的な体験につながる広告でなければ、結果的に広告に対するレレバンシーも高まらないし、それはクライアントにとっての価値にもつながらない。すべては、顧客第一主義を基点に企画している。
例えば、日本国内で展開した例をあげると、人気アニメの「妖怪ウオッチ」をデザインしたAmazon ボックスの企画がある。広告でありながら、顧客からも大変喜ばれた企画だ。このように我々はディスプレイアドなど、オンラインの場だけでなく、商品が顧客の手元に届くまでのあらゆる場が、メディア化できると考えている。
—Amazonのサイト内だけでなく、配送用のトラックや梱包用のボックスなど(日本ではまだ実施されていないものも含め)、顧客との接点のあらゆる場を活用した広告メディア開発が進んでいると聞く。新メディアやそこに載るクリエイティブはどのように開発をしているのか。
Amazonの社内には、「カスタムソリューション」という部門があり、そこが専門的にクライアント向けのメディアやソリューションの開発を進めている。この部署内には、クリエイティブチームも抱えており、主に大手のクライアントを対象に制作もサポートしてきた。
我々が提供するのは、これまで世の中になかったメディアやソリューションであり、外部のエージェンシーから、まだその活用法が理解されていないものだ。そこで、「カスタムソリューション」チームが社外のエージェンシーと連携しながら、クリエイティブ開発を進めている。
—「カスタムソリューション」チームには、どのようなバックグラウンドを持った人材が何人程度、在籍しているのか。
具体的な社員数は非公開なので答えることはできないが、ひとつ言えることがあるとすれば、Amazonはこれからもこの部門への投資を進めていくということだ。またメンバーのバックグラウンドは、クリエイティブエージェンシー出身やトラディショナルなブランドマーケティングの経験者、デジタルマーケティング経験者など非常に多岐に渡る。
—以前から存在するマスメディア始め、クライアント企業が消費者と接点を持つことのできる手段はたくさんある。その中で、クライアントは何に期待してAmazonを消費者との接点づくりの場に選んでいるのか。
消費者一人ひとりの嗜好性を深く理解したうえで、コミュニケーションが可能な点が支持されていると考えている。例えば飲料メーカーは、飲料カテゴリで商品を見ているAmazonの顧客に向けてメッセージを届けたいと考える。
その時、その顧客が飲料以外でどんな商品に興味を持っているかを理解できると、カスタマージャーニーに沿ったメディアプランニングが可能となる。企業が消費者の嗜好性や行動をより深く把握できる機会をAmazon上で提供していると考えている。
最近、特にブランドの認知から購買に至るまでの態度変容のプロセスを精緻に把握したいと考える、マーケターが増えていると感じる。私たちも、こうしたニーズに対応し、データ提供をはじめとするクライアントに対するレポーティングのサービスを強化している。
かつてカスタマージャーニーは、シンプルで直線的なものだったが、現在はタッチポイントが格段に増えたことで、複雑化している。カスタマージャーニーが複雑化する中でも、そのジャーニーの中で購買決定のカギになるポイントをいかに捉えて、そこでインパクトある施策を実行することが、マーケターが望んでいること。この環境で、Amazonだからこそ、貢献できることは多いと考えている。
米国内では、Amazonを使ったマーケティング活動が「Eコマースマーケティング」として、検索広告やソーシャルマーケティングなどと同様に、確立された一つのジャンルとして認識されつつあるという実感を持っている。