—具体的に、どのような広告メニューの展開をしているのか。
最近、特に伸びていて力を入れているのが日本でも展開している、サイト内での検索連動型広告「AMS(Amazon Marketing Services)」だ。このメニューは事業規模の大小に限らず、多様な企業に活用いただいている。このメニューはパーチェスファネルで言えば下の部分、購買意思決定の直前タイミングを捉えるものであり、Eコマースサイト「Amazon」を広告メディアとして活用したメニューとして、理解してもらいやすいものだと思う。
「AMS」と対照的なものとしては、例えばAmazonプライム会員向けサービスである「Prime Now」を活用した事例がある。「Prime Now」は、注文から1時間以内での配送も可能なサービスだが、この枠組みを使い、日産自動車は同社の新型「ノート e-POWER」の試乗車を最短1時間で宅配するキャンペーンを実施した。
またゲームメーカーのEAは、サッカーの試合が行われるスタジアム内で、サッカーのゲームのソフトをPrime Now会員が注文できる施策を実施。注文した人の中から抽選をし、当選者にはハーフタイム中にゲームソフトを客席まで届けるという施策を実施した。こちらの施策はパーチェスファネルで言えば入り口部分、商品認知のきっかけづくりに活用された事例と言えるだろう。
—Amazonで扱っている商品の購買の最後の後押しになる広告だけでなく、広くブランドと消費者の出合いの場を提供することも、「Amazon Media Group」が目指していることなのか。
Amazonのサイトから購買機能を外したところを、想像してほしい。それは多様な商品群の価格やカスタマーレビューを誰でも閲覧することができる場だ。いま何か、商品を探している人は、まずAmazonのサイトを訪れ、商品に関わる情報を入手するだろう。そのまま、Amazonで購入にまで至る人もいれば、Amazonで知った商品をオフラインの店舗で買う人もいるだろう。
実際、少し前の調査だが、すでに「Amazonが起点となり、Amazon外で商品を購入したことのある人の割合が37%に達している」という結果も出ている。この傾向は、さらに強まっているだろう。そこで、私たちは「Amazon Media Group」が提供する広告商品は、Amazon内で商品を販売していない企業にも利用してもらえるものだと考えている。
また、日本でも4月より動画広告枠の販売を開始する予定だ。このメニューは販売促進というより、認知やブランディングを目的とした企業による活用も見込んでいる。
—日本には未導入だが、Amazon開発の「Alexa」が内蔵された人口知能スピーカー「Amazon Echo」など、Eコマースサイトに留まらない展開をしている。こうしたプロダクトやサービスでも、広告・メディア開発を進めていくのか。
「Alexa」は、「Skill」と言われるスマートフォンで言うアプリのようなソフトを「Alexa Skills Kit」を利用し、作成して「Alexa」に独自の機能を追加することができる。すでに1万を超える「Alexa Skill」がディベロッパーによって開発されていて、中には広告キャンペーンに活用されているケースもある。
例えば、昨年は米国で映画「バットマンVSスーパーマン」の公開に合わせたキャンペーンに活用された。それまでも、DVDの販売などで連携してプロモーションをしてきたが、そこから派生して映画のチケット販売のプロモーションをAmazon上で実施した。
このプロモーションでは「Alexa Skills Kit」を使って、オリジナルゲームを制作。「バットマン」のストーリーは、主人公のブルース・ウェインの両親が殺されてしまうところから始まるが、プロモーションでは、その犯人を捜すというRPGをつくり、顧客が「Echo』を介して、ラジオドラマのような感覚で謎解きができるコンテンツをつくった。ブランドが持つ資産、顧客のインサイト、そしてアイデアを組み合わせると、このように面白いソリューションができあがる。
—日本でも昨年末、米国内にオープンしたAmazonが手掛ける、実店舗の「Amazon Go」が話題になった。
「Amazon Go」は、スマホに無料アプリをダウンロードし、入店の際にチェックインすると、店舗を出る際に、店内で手に取った商品がレジを通らずとも、自動で決済される店舗だ。まだβ版であり、米国でも1店舗がAmazon本社施設内にあるだけで、一般公開されているわけではないが、私たちが実店舗展開への投資を強化している流れにある。
米国では、すでに複数店舗の書店も開設している。
オンラインだけでなく、オフラインも含めた新しいリテールエクスペリエンスを提供すること。加えて、そこで扱う商品も「モノ」だけでなく、デジタルコンテンツにも広げていきたい。自社でオリジナルコンテンツ開発に力を入れているのも、この方針があってのことだ。
私たちAmazonは、「地球上で最もお客さまを大切にする企業」を標榜してきたが、この企業理念に基づき、お客さまにとって適切なサービスや体験をこれからも開発していく。
—日本市場におけるビジネスの展望は。
アマゾンジャパン内の「アマゾンメディアグループ」の人員も今、まさに拡充しており、積極的に採用を進めている。日本は世界有数の広告市場であり、私たちもさらに注力していきたいと考えている。