TEDの有名なプレゼンの一つに、ウィル・スティーヴン氏の「頭良さそうにTED風プレゼンをする方法」があります。
スティーヴン氏は、実は何も意味のあることを言っていないにも関わらず、立派にTEDらしいスピーチができることを示したのです。これは何もTED自体を批判しているわけではありません。
彼が何も意味のあることを言っていないことで、聴衆に明確に示したのは典型的なTEDスピーチにおける「形式」でした。
この形式の提示という意味では、プレゼンに成功しているのです。これは別の言葉では、「テンプレート」「構成」「フォーマット」「フレーム」などと言い換えても構いません。
これがTEDの様々な内容のプレゼンに一貫したものであり、それは目には見えないが、明らかに一流のTEDのプレゼンテーションに共通しています。逆に言えば、それを守っている限り、内容に関係なく「頭の良さそうなスピーチ」として、聴衆が楽しめるものになるという真理を示しています。
マーケターの皆さんは、この彼の視点に対してどんな感想を持つでしょうか?
わたしが皆さんに示したいのは、頭が良さそうに見えることとは、多くの場合、その本質的な形式を上手に把握していること自体が、「インテリジェンス=頭の良さ」であるということです。
このような、ちょっと気の利いたスマートさを示すためのヒントとして、スティーヴン氏をお手本に、マーケターとして頭がよく見える5つの方法をご紹介しましょう。
1.見ていることを「インサイト」として話す
あなたは自分が実際に見ているものを、いちいち他人に話したりするでしょうか。普通の人はしません。多くの人は、何かを発言するからには、そこに意味があると考えるからです。だからこそ、あなたがただ普段見ているものを他人に伝えると、さも「発見のように」感じます。
洞察がある発見のことをマーケティングでは「インサイト」といいます。ただ見たままのことを、さもインサイトのように発言してみましょう。
「満員電車でみなスマートフォンをいじっている」
「サラリーマンはいつも同じようなスーツを着ている」
「スターバックスのバリスタは必ず、同じ言葉を使う」
などなど。特に言い切りの断定口調で、短い文章で発言すると、他人にとっては意味のあることのように感じられます。これらの文章をポストイットに書いて、机に貼っておくのもいいでしょう。さらに数が増えたら、分類してグルーピングしているポーズをするのもいいでしょう。
2.子供のころのエピソードを例として出す
スティーヴン氏もスピーチの中で言っていますが、TEDのスピーカーは雰囲気をほぐすために冒頭で個人的なエピソードを話します。特に、子供のころの個人的な話というのはどんな場面でも恥ずかしいものですが、それをビジネスの場面でうまく使うことでより深いストーリーを持った印象を与えられます。特に小難しい質問をされたときに、その答えをする前に子供のときの話を、例に出すと効果的です。
同僚:「ここのKPIはどう考えているんだ?」
あなた:「俺は子供のころに、自転車にうまく乗れなくて苦労したよ。だが何度もトライして乗れるようになった。俺が考えるKPIというのはそういうものだ。」