NY Subway Series #1: もし寒々とした病院が「空飛ぶお城」だったら?

【前回】「ニューヨーク サブウェイ・シリーズ 始めます。」はこちら

本コラムでは筆者がNYを象徴する「サブウェイ」を舞台に、なぜクリエイターや起業者がこの街を好み、成功し、毎日を乗り越えていっているのか、一人ひとりの働き方について、乗車中の限られた時間の中でインタビューしていきます。

宮城エリ

女優のオードリー・ヘップバーンに憧れ14歳の時にカナダへの留学を決意。
高校の時から広告業界でインターンをしながら、Pratt Instituteに入学しコミュニケーションデザイン科を卒業。フォトグラフィーを趣味に、アートディレクター/デザイナーとしてTBWA\Chiat\Dayなどの広告代理店で活動を経て、現在NYでInamoto & Coに所属。

 

Minds + Assembly共同創業者のステファン・ミナスヴァンド氏。今回は、Fulton St.から勤務先最寄りのBowery Station駅まで同行。話しているととても穏やかで、忙しい毎日の中でもリーダーらしく周りの雰囲気を落ち着かせるパワーを持っているステファン。

多くの世界的なテクノロジー企業が今、注目しているのが医療・ヘルスケア産業だ。「規制が多く、一見するとアイデアが生かせないようにも思える分野。しかし、だからこそそこでイノベーションをすることにやり甲斐を感じる」とステファンは語る。

大手広告代理店を離れ、15カ月前に2人の共同創業者と共に3人で始めたMinds + Assembly。「新しいテクノロジー」と「アイデア」をバランスよく操りながら、人々の生活の質を高めることを目的に、人と体に関わる興味深いプロジェクトを手がけている。

広告ベンチャーだからこそできる早い良い仕事。その会社を設立した背景は?

「この時代に会社を始めない理由はない。もう言い訳はできない。」

会社を立ち上げたのは、大手広告代理店にいると物事の調整や意思決定に時間がかかり、「人のためになるものを作りたい」という自分の目標が霞んでしまうと感じたことが理由。今の時代、オフィスを持たないパソコン好きの子供でも自宅でソフトフェアを作ることができる。

もし現状、自分のやりたい仕事ができていないのであれば、自分の手でその仕事を始めるしかない。「新しい会社を立ち上げられない理由が何かあるか」と自問したけれども、特にそれはなかったし、自分に言い訳はしたくなかった。

「日曜日に新しいクライアントのチャンスがきて、月曜日に仕事を辞めた」

会社を新たに立ち上げるプランについては、他の共同創業者2人ともしていた。
物事が動き始めたのはある日曜日、そのプランを人伝に聞いた人が具体的な仕事の提案をしてきたんだ。

その提案を受け、月曜日には所属していた企業を辞めた。突然辞表を出して起業するというのは、僕が所属していたような大手広告代理店にとっては衝撃だったと思うし、大手広告代理店の風土に照らしても滅多にあることではないから、会社は喜んでいなかったと思う。

会社を立ち上げてからは、もちろん、物事の調整や意思決定に時間がかかることもないから、デスクに向かって良い仕事ができるようになった。

クライアントからは、僕らと「面白い仕事がしたい」と連絡が来るようになった。僕らの仕事に対する姿勢を見て、クライアントは僕らを選んでくれているんだと思う。

次ページ 「お金を目的にしていないからこそ、いい人材が来る」へ続く

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