アウディジャパン、良品計画、大広が語る「ロイヤル顧客を生み出すためのブランドのつくり方」

どのようにブランドを育成し、顧客にブランド体験を届けるか

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良品計画 WEB事業部長 川名常海氏

第3部では、「顧客との良い関係を築く、デジタル時代のブランドのつくり方」をテーマに、良品計画WEB事業部長の川名常海氏、アウディジャパンマーケティング本部デジタル&CRMマネージャー井上大輔氏、大広アクティベーションデザイン統括ユニット大阪プロデュース局第1グループ部長の澤田善郎氏をパネラーに迎えたパネルディスカッションが行われた。

まず始めに、CRMとロイヤルカスタマーについて各企業がどのように捉えているのかを紹介。

井上氏は、「CRMの目的が、ロイヤルカスタマーの醸成であることだと理解している人は多いが、問題は人によってその定義や認識が異なること。購買金額が高い人、買っていなくても周りへ推奨してくれる人、一緒に商品開発をしてくれるコ・クリエイターのような存在など様々だ。まずはロイヤルカスタマーとは誰であるのかを決めることが重要だ」と見解を語った。

続けて、良品計画の川名氏は「MUJI passportというアプリで、顧客の購買データやWeb上の行動データを取得している。そのデータから見えてきたのは、①アプリ参加(MUJI passportのダウンロード)②SNS参加(SNSアカウントのフォロー、コメント)③店舗で実施しているイベント参加 ④共創参加(改善や新規商品開発のアイデアを提案する)の順に、LTVが高くなること。①から④に向かってブランドへの参加度合いが高くなるほどロイヤルティも高くなる」と述べた。

いかに顧客のロイヤルティを高めていくのかについて、大広の澤田氏が言及。「昨今、どの企業も顧客ロイヤルティ向上のための施策に頭を悩ませている。ロイヤルティを高める鍵は、顧客にどのようなブランド体験をもたらせるか。そのために何をすべきかが、今後重要になってくるだろう」と提示した。

続いて、澤田氏が語った「ブランド体験」をテーマに、アウディジャパンと良品計画の取り組み事例を紹介。井上氏は、アウディジャパンで顧客体験のダイアリーを付ける活動を行っていると紹介。ターゲットとする顧客が、朝起きてから寝るまでの体験を細かくピックアップし、一日に何種類のブランド体験に触れているのかを探っている。

「目覚ましを止めることも、牛乳を飲むことも、靴紐が頻繁にほどけてしまうことさえも、顧客にとってのブランド体験である。企業側がデザインしようとしているブランド体験は、顧客が実際に体験している何千にも及ぶブランド体験のうちのほんの一部だということを認識しておかないといけない」。

一方で、川名氏は良品計画ならではの強みを紹介する。

「無印良品はブランドが強いとよく言われるが、実は社内でブランドやCRMといった言葉はほとんど口にされない。ただ一つ、自社の強みは、働いている社員が無印良品のファンであること。だからこそ自ずと、あったらうれしい商品の企画や、顧客に心地よく思ってもらえる接客のアイデアが浮かぶ。自分たちがどうありたいか、何をされると嬉しいかという気持ちが、ブランドづくりにそのまま反映されている」。

また、デジタルマーケティングにおいて重要と語られる、データの分析・活用もテーマに挙がった。まず澤田氏が、「これからはビッグデータの時代と言われて久しいが、データが多くなればなるほど、大事なデータを見失いやすくなる。使えるデータは実はごくわずかだからこそ、どのデータを使うのかを決めることが大事」と語った。

続いて井上氏は、「以前はさまざまなデータを参照していたが、現在は意識決定の参考になるデータしか参照しない」と語った。さらに、「データ分析にあたっての一番の失敗は、いきなりWeb解析ツールなどにログインしてデータの確認から始めること。それではデータ迷子になってしまう。アウディジャパンでは、まずケリをつけたい問題を洗い出す(例. ショールーム来場にもっとも影響力の高い因子はなにか?)。次にそれらの中から優先度の高いものを選び出し、その問題に対して仮説を立てる(例. それは商品説明ページの滞在時間である)。その仮説を実証、あるいは反証するために必要なデータだけを探す(例.滞在時間が一定時間以上の人とそれ以下の人の、ディーラー検索へのコンバージョン率比較)」と紹介。

川名氏も「データは仮説を検証するためのもの。また、商品・サービス開発においても、データからは商品開発の芽は生まれづらく、むしろデータから離れて、顧客の行動を観察した方が、新しい商品やサービスの種を見つける近道だと思う」と語った。

パネルディスカッションの最後は、「顧客の囲い込み」について話しあった。

まず澤田氏は、「生活者が自らチャネルや情報を選ぶ時代に、囲い込みの実行は不可能であり、1つの施策で多くの顧客を動かすことは難しい。ただ、メールは見ないがLINEの通知は受け取る顧客などがいることからも、少数の顧客と多数のチャネルの掛け合わせでファンを増やしていくことは可能だと言える。また、ブランドへのロイヤルティがすでに醸成されている顧客とされていない顧客では、情報を受け取ったときの心証も異なる。だからこそ、ブランドと顧客の距離感の詰め方が肝になってくる」と見解を述べた。

この話を受けて井上氏は、「顧客をコントロールしようという意識を捨てることが大切。ブランドは企業がデザインしていくものではなく、消費者の中に自然発生的にできるもの」と語った。

続けて川名氏は、「無印良品というブランドは、企業側が力を持つ大量生産、大量廃棄社会へのアンチテーゼとして生まれた。そのため、常に顧客起点で発想し行動をしてきた結果がブランドの支持に繋がっていった。しかし今後、顧客になる現在の若年層は、こうした時代背景やブランドストーリーを知らない世代。彼らに対してどのようにアプローチしていくかが課題だ」と説明。

これには井上氏も共感し、「若年層の所有欲は少ないものの、体験に対して大きな価値を感じている。だからこそ、アウディジャパンも自動車体験を提供する企業へシフトし始めている」と続いた。

最後に澤田氏は、「ブランドの捉え方が、本来あるべき消費者・生活者・顧客視点に戻ってきている。企業からの一方通行になりがちだったこれまでのコミュニケーション方法やコンテンツも、軸を転換して見直すことが求められる時代」と会場に呼びかけて、セミナーを締めくくった。


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株式会社 大広
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