パナソニックとリクルート、インテージが考える「生活者のモーメント(瞬間)」を捉える取り組みとは?

インテージは3月1日、東京都内にて「モーメントを捉える マーケティング最適化セミナー」を開催した。パナソニックとリクルートマーケティングパートナーズの事例講演と、インテージを加えた3社によるパネルディスカッションを通じて、マイクロモーメントを捉える試みが紹介された。

お客さまの関心が高まった瞬間に必要な情報を届ける

第1部:企業講演「マスから個へ」
講演者:パナソニック コンシューマーマーケティング ジャパン本部 コミュニケーション部 部長 楳谷秀喜氏

第一部はパナソニックの楳谷秀喜氏が登壇し、2015年秋から開始したキャンペーン「ふだんプレミアム」の事例を紹介した。従来の「エコナビ」キャンペーンから、新キャンペーンへの転換の狙いについて、楳谷氏は次のように解説する。

パナソニック コンシューマーマーケティング ジャパン本部 コミュニケーション部 部長
楳谷秀喜氏

「ポストエコ時代の今、30~40代の家族が求めるものを知るために、ターゲットである夫婦共働きの子育て世帯を調査しました。そこからわかったのは、彼らが高級感ではなく高品質を、ステータスではなく“こだわり”を、背伸びではなく身の丈を求める層であること。そこで、精神的な豊かさを求める変化の兆しをコンセプト化したのが“ふだんプレミアム”でした」。
 
キャンペーンの開始にあたって考慮したのは、ターゲットの情報接触方法の変化。モバイルデバイスの利用が加速し、従来のテレビCM視聴から大きく変化したため、情報伝達手段を変える必要があったという。

「ユーザーの視聴環境の変化を考慮し、いつでも好きな時に動画を見るスマホのスタイルに対応しました。消費者の関心が強く、情報が必要なタイミングでコミュニケーションできるよう環境整備したことがモーメントを捉えることにつながったと考えています」。

動画の種類についてはGoogleが提唱する「3H戦略(用途に応じてヒーロー、ハブ、ヘルプ動画を制作)」を採用した。特に消費者の認知を得るためのヒーロー動画においては、一例として「家族からの愛の言葉で体温は上がるのか?」をテーマに、エアコンの温冷感センサーを紹介する動画を制作。人々の“あたたまりたい”という思いが高まる大寒(1月21日)に動画を配信し、海外メディアも含む各種メディアやSNSで話題を呼び、再生回数を伸ばすことに成功した。

「キャンペーンの結果から分かったのは、視聴者が自ら見たいと思う動画は能動的にシェアされるということ。そして、これまでのキャンペーンではメーカー都合による情報発信になりがちでしたが、モーメント発想でお客さまの関心が高まった瞬間に必要な情報を流すという姿勢が重要なことです」。

キャンペーンの結果も、通常は男性からのサイトアクセスが6割を超えるのに対し、「ふだんプレミアム」キャンペーンでは、ターゲットである女性からのアクセスが7割となり、25歳から44歳のアクセスが35%から64%に伸びた。さらに洗濯機、エアコン、冷蔵庫ともに販売数を伸ばし、シェアの拡大につながった。

プロポーズから式当日まで花嫁と伴走するメディアをつくる

第2部:企業講演「ゼクシィが提供するユーザーエクスペリエンス」
講演者:リクルートマーケティングパートナーズ ネットビジネス本部 執行役員 櫻井康平氏

第二部では、リクルートマーケティングパートナーズの櫻井康平氏が、結婚情報サイト「ゼクシィネット」のサイトリニューアルについての講演を行った。リニューアル前の「ゼクシィネット」が抱えていた課題について櫻井氏はこう述べた。

リクルートマーケティングパートナーズ ネットビジネス本部 執行役員 櫻井康平

「花嫁からのアクセスは多いにも関わらず、式場への問い合わせなど実際のアクションフェーズになると、離脱してしまうユーザーが若干存在する。理由を調査しても、ユーザーからの不満要素は特に見つかりませんでした。そこで、さらなる調査を行ったところ、ユーザーが特に意識せずに競合サイトの情報を見た流れで、そのままアクションをしていることが分かりました」。

その結果を受けて、櫻井氏は花嫁にとって必要な情報が掲載されて「一緒に伴走するメディア」になれば、アクションにつながるはずと仮説を立てて、エスノグラフィ調査を実施した。16人の花嫁に非公開アカウントのツイッターを用意してもらい、2週間に渡り、彼女たちがいいと思ったことや見た写真などを随時アップしてもらったのだ。

「分析結果から導き出されたのは、花嫁の結婚へのマインドシェアが非常に高いことでした。スマホを片手に時間や場所を選ばず、常に情報収集をしていたのです」。

さらに、その結果を分析することで、分析を花嫁がアクションにいたるまでに、「①学習・夢見るフェーズ」「②軸形成フェーズ」「③比較検討フェーズ」の3つに分かれていることも見えてきた。

「それぞれの検討段階によって欲しがる情報は変化します。だからこそ幅広いコンテンツを準備し、情報提供のパーソナライズを行うことが重要になってきます。ビッグデータを活用しながら、ユーザーの多様で細分化された要望に答えるために情報を出し分けるようにしました」。

さらには花嫁がキュンと心を動かされ、結婚式に向けたタスクを作業ではなく喜びとして取り組めるようにUXも工夫した。サイトリニューアル後、式場の予約数は昨年同月比143%までアップ。サイト再来訪頻度は、39%のアップを果たした。

次ページ 「「自分らしさ」への欲求にリアルタイムに応えるには?」へ続く


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株式会社インテージ
〒101-8201 東京都千代田区神田練塀町3番地 インテージ秋葉原ビル
TEL.03-5294-0111

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