ACC賞の名称がなぜ変わるのか?
—「ACC CM FESTIVAL」という名称からCMがなくなり、「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」に変わった理由は?
土橋:広告という領域にこだわらずに、クリエイティビティをコアにしてACCの活動をしていこうという宣言ですね。日本を代表するクリエイティビティをきちんと表彰し、盛り上げ、発展させる場をつくるんだという決意の表れ。だからクリエイティビティと言い切っているし、「TOKYO」とシンボリックな都市名をつけている。
嶋田:変化の象徴ですよね。クリエイティビティという概念が大切。これまでの賞ではACCに応募できなかった方たちに光が当たる舞台を増やすということです。
土橋:「TOKYO」は、東京だけということではなく、日本全国の原動力となり、世界への発信力となるためのシンボルです。ちょうど東京オリンピックも近いですしね。
—今後も部門がさらに増えていくのですか?
土橋:増えるかもしれないし、今あるものが細分化されるかもしれない。時代のニーズに合わせて再編することもあるかもしれませんし、変化し続けなくてはならない。僕らはもっと早くから変化していなくてはならなかったよね。ついに、動きますよ。
嶋田:ここ大見出しかな(笑)。「ACCが動きます」。
—新設される「メディアクリエイティブ部門」について教えてください。
嶋田:生活者とつながっているのはメディアです。そのメディアが複雑化しているのが現状ですね。「デジタル」「ソーシャル」とよく言われますが、それが主かというとそれも違う。既存のメディアも力を持ち続けていて、そのメディアを起点に新たな広告コミュニケーションが次々に生まれています。メディアの強みをうまく使ったクリエイティビティにより、新しい情報発信やコミュニケーションが生まれて課題解決につながっている。「メディア×アイデア」のチャレンジ、独自性、独創性を評価する賞です。
土橋:メディアの方々も時代の変化を強く感じていて、どんどん新しいことを生み出しているし、もっと生み出そうとしている。今は、一気に変わる前夜だと感じています。そこに、ACCが拍車をかけられたら。ラジオは「radiko.jp」でデジタル配信しているし、テレビ朝日さんは「AbemaTV」をしているし、新聞社のサイトもたくさんのユーザーを抱えていたりする。自前だけでなく生活者との組み合わせもあるし、メディアの新しい長所を発掘していきたい。
嶋田:さまざまな取り組みをどんどん掘り起こして、ACCが「これは未来感がある」と表彰することで刺激が生まれ、さらに新しい挑戦につながることを期待しています。表彰に値する取り組みはたくさんあるのに、日本の広告賞の中にはメディアの取り組みを評価する場がないんですよ。コンテンツで言えば「ギャラクシー賞」などがあるんですけど、取り組み自体の評価の場がない。この部門で「あれが獲ったんだ」「これはだめなんだ」ということが、今後の刺激やナレッジ共有になれば。大きなお金を使ったとか、多くの人を動かしたという結果を審査の中心にするのではなく、何かそこにメディアライクな掛け算や新たなチャレンジがあるかということが大切です。
土橋:皆さんが模索し、取り組んでいるものを共有したいですね。
嶋田:メディアもまだ閉鎖的な部分があって、融合しきれていないところがあると思うんです。ACCを通じて業界が横断し、手を組み、融合できたら、化学反応が起きて新しいやり口が生まれるかもしれません。それは広告主にとっての新しいソリューションになるかもしれないし、生活者にとっての新しい刺激になるかもしれない。
—ローカルの取り組みも評価されますか?
嶋田:そこは大きなポイントだと思います。ローカルメディアというのは地場に根付き、県民と一緒になって、県民のために取り組んでいる。ソーシャルの課題に企業を巻き込むやり方は、もしかしたらローカルの方が上手なところがあるかもしれません。どんどんエントリーしていただいて、その取り組みを可視化させていただきたい。
土橋:こういう場でもないと、ローカルの取り組みに触れる機会がないですからね。宝の山だと思うんです。そしてローカルにとっても、「他のエリアがどうやっているか知りたい」というニーズがあると思うんです。人数が少ないメディアもある中、アイデアが知りたい。
嶋田:人手が足りない時こそアイデア、クリエイティビティが出てくるということもありますもんね。ローカルの事例を全国に展開したら、大きいムーブメントになることがあるかもしれない。クリエイティビティのヒントは、ローカルの中にたくさん眠っているのかも。そんなお宝を東京に集めて、世界に発信できる。賞の名前に「JAPAN」案もあり、議論が白熱しましたが、そういう意味で「TOKYO」はいいですね。
—メディアの中でも、どんな方たちにエントリーしていただきたいですか?
嶋田:メディアの中で広告ビジネスや営業的な仕事をされている方にとって、これまで賞というのは縁遠かったかもしれません。でも、これからはそのビジネスを応募できる。ビジネスを回している方は、メディアを使った広告ビジネスを「クリエイト」しているわけですから。企業と編成、制作をつないでいるプロデューサーですよ。そういう方の仕事を評価できる場になればと思います。
土橋:メディアにとって商品そのものの応募だもんね。まさに営業直結ですよ。
嶋田:賞を獲れば、「うちは持ってますよ」と商品をどんどんヒーローにできますね。