つくづくアメフトは、アメリカの縮図だなと思うのですが、アメフトは攻守でフィールドプレイヤーが完全に入れ替わり、20種類以上の細分化されたポジションが存在し(Holderと言われるキックするボールをセットするためのポジションすらもあります)、ベンチにも大勢のその”スペシャリスト”たちがスタンバイし、アメフトはサッカーのように選手交代の制限がないので、状況や戦術に応じて最適な選手が入れ替わり立ち替わり出てくるわけです。
当の私も東京時代は横に広い仕事の関わり方をしていたので、 こちらに移った当時はこの考え方の違いに非常に戸惑いました。 気を効かせてやったつもりが、それは違う部署の仕事だから、(専門外の)お前がやる必要はない。ということになるわけです。
印象に残っている話があります。今やポートランド屈指の人気デザインオフィスとなったOMFG Co.のファウンダーであり、クリエイティブディレクターであるJeremyとメキシカン料理をつまみながら飲んでいた時に、彼が自分のルーツを教えてくれました。
彼はもともと’Wieden+Kennedy 12’という弊社の広告学校の出身で、当然そこの参加者のゴールはあわよくば修了後に社員として入社することですが、Jeremyは入社できませんでした。そのフィードバックは、「コピーもアートもできるけど器用すぎて、コピーライターでもアートディレクターでもない。」というものでした。
結果的に、彼はその才能をACE HOTELのクリエイティブディレクターとして如何なく発揮し、OMFG Co.を設立。弊社はその才能を逃したわけですが、この国の仕事のスタンス、クリエイティブ業界における求められることが非常に垂直的なことがわかって頂けるのではないでしょうか。
Jeremyの成功を見るように、横に幅広い器用な能力が花開くことも当然あります。つまりどちらが良い、悪いではないですが、ただよくよく考えてみると、若い人材が企業の門を叩くプロセスがすでに違っているともいえます。
(最近はいろいろな議論がありますが) 入社した学生たちが横一線でスタートする新卒一括採用が主流の日本では、大学で学んだことよりもややもすると面接で感じ取れる人間性が評価基準だったりします。それはきっと社風に合う合わないという基準に加え、定期的な社内異動を経て、幅広い様々な知識を吸収してくれそうだからという理由もあるでしょう。
逆に、こちらでは学生が「大学時代の専門分野はこれで、私のポートフォリオはこれで・・・」と企業へ売り込み、企業はスペシャリストの卵を探しています。またはインターンを経て、本採用までに適性能力を見極めます。当然、大学から新卒で働く新人はいますが、新卒一括採用という概念はありません。
国が違えば、言葉の違いはもとより、仕事のスタンス違いや人材評価基準も違うことはあまり語られることが多くないと思うので、柄にもなく堅苦しい内容のコラムを書いてみました。
仕事のスタンスが並行だろうが垂直だろうが、いつか”仕事のデキる人”になりたいです。(あぁ今日もポートランドはビールがうまい。)