大手広告主の予算凍結事件が突きつけるもの。メディアが生み出す文脈的価値とは何か?

開かれた「パンドラの箱」?

今回の大手広告主の広告予算凍結をめぐり、ひとつ興味深いファクトが見出されたという。

大手金融機関JP Morgan Chaseの試みを報じるAdvertisingAgeの記事

米国の大手金融機関JP Morgan Chaseが、事前に認定したWebサイトにのみ広告配信することを決めた。その結果、従来のメディアの素性を問わない広告配信では40万もあった掲出先が、5000にまで縮減したという(「Chase Had Ads on 400,000 Sites. Then on Just 5,000. Same Results.」)。

ここで配信先の規模の変化を驚くべきではない。驚くべきは、同社CMOが、その配信規模の劇的な縮減にもかかわらず、同社が支払うCPMに大きな変化はなかったと認めたという点にある。広告掲出先の減少にもかかわらず、広告単価の上昇、もしくは広告効果の低減はもたらされなかったというのだ。

ある記事(「Did JPMorgan Chase Just Start A Digital Advertising Revolution?」)は、広告関係者による「Chaseは偶然、パンドラの箱を開けたことになる」というコメントを紹介している。

われわれが、メディアと広告、そしてテクノロジーの関係を、改めて考える機会に遭遇しているという点に気づくべきだろう。

参照資料
米国大統領選を動かした?“フェイク(偽)ニュース”とメディアはどう戦うのか
グーグルからの広告引き上げ騒動、広がり続けるその背景
Google says its YouTube ad problem is ‘very very very small’ but it’s getting better at fixing it anyway
SLEEPING GIANTS CONFIRMED LIST – Updated 4.11.17
だれがメディアの価値を追いつめているのか
コンテキスト指向メディア論
サービスとしてのメディア/文脈的価値をめぐる断章
Chase Had Ads on 400,000 Sites. Then on Just 5,000. Same Results.
Did JPMorgan Chase Just Start A Digital Advertising Revolution?

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藤村 厚夫(スマートニュース)
藤村 厚夫(スマートニュース)

90年代を、アスキー(当時)で書籍および雑誌編集者、および日本アイ・ビー・エムでコラボレーションソフトウェアのマーケティング責任者として過ごす。

2000年に技術者向けオンラインメディア「@IT」を立ち上げるべく、アットマーク・アイティを創業。2005年に合併を通じてアイティメディアの代表取締役会長として、2000年代をデジタルメディアの経営者として過ごす。

2011年に同社退任以後は、モバイルテクノロジーを軸とするデジタルメディア基盤技術と新たなメディアビジネスのあり方を模索中。2013年より現職にて「SmartNews(スマートニュース)」のメディア事業開発を担当。

藤村 厚夫(スマートニュース)

90年代を、アスキー(当時)で書籍および雑誌編集者、および日本アイ・ビー・エムでコラボレーションソフトウェアのマーケティング責任者として過ごす。

2000年に技術者向けオンラインメディア「@IT」を立ち上げるべく、アットマーク・アイティを創業。2005年に合併を通じてアイティメディアの代表取締役会長として、2000年代をデジタルメディアの経営者として過ごす。

2011年に同社退任以後は、モバイルテクノロジーを軸とするデジタルメディア基盤技術と新たなメディアビジネスのあり方を模索中。2013年より現職にて「SmartNews(スマートニュース)」のメディア事業開発を担当。

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