デジタル施策で失敗しがちな日本企業の新たなパートナー
日本では、マーケティング戦略の構築において「デジタル」と「アナログ」の施策が、分かれてしまっている企業が多い。日本企業に多い縦割り組織の壁も、この環境を生み出す要因のひとつになっていると言えるだろう。
しかし顧客視点で考えれば、デジタルもアナログもブランド体験のひとつにすぎない。より魅力的なブランド体験を提供するためには、両社が融合した戦略の立案と実行が欠かせない。その実現のサポートに大きく寄与するのが「デジタルリードエージェンシー(DLA)」だ。
デジタル分野の専門家が各企業に最適なテクノロジー活用を提案し、実現に向けて企業の担当者と二人三脚で企画を進めていく。海外ではすでに多くの企業がDLAとパートナーシップを結び、最新のデジタル技術を駆使したマーケティング活動を展開している。
「日本では聞きなじみがないかもしれませんが、生活者のあらゆるシーンにデジタルが浸透するようになった今、当然コミュニケーションプラン全体もデジタル基点で発想することが求められています。これまでの広告会社だけでなく、DLAのようなデジタル専門部隊にしっかり任せる流れは自然なこと。デジタルは特に、専門的なのに進化のスピードが非常に早い。それを専門にしている人が企業のデジタルコミュニケーションを最適化していくことは、企業の判断としては良いことだし、我々にとっても大きなチャンスだと日々感じています」と語るのは、IMJでクリエイティブディレクターを務める、後藤仁和氏だ。
垣根をつくらないチーム体制が新しいアイデアを生む
IMJがDLAとして担当したプロジェクトのひとつに、2016年に実施されたフランスのシャンパンメゾン「モエ・エ・シャンドン」の事例がある。
モエ・エ・シャンドンは、世界で最も愛されているシャンパン。270年にも及ぶ歴史を持ち、高いブランド力を誇る一方、ミレニアル世代へいかにリーチしていくのかが課題になっている。
「華やかでラグジュアリー、何かの祝い事で楽しむものと、長い歴史を持つからこそ定着している商品イメージがあり、比較的年齢層の高い人たちに飲まれている割合が高い。そうした既存の方々を大事にしつつ、新しい層の顧客獲得にグローバル全体で取り組みを進められています。このタイミングでどうコミュニケーションプランを策定していこうか、担当者の方と定期的に会議を重ねて、考えを深めていきました」。
昨年11月には、大型イベントを実施。その中では、テーブル上にモエ・エ・シャンドンのシャンパンを置くと卓上に小さな花火がはじけ飛び、乾杯をした瞬間に打ち上げ花火が上がるというプロジェクションマッピングを活用した企画などを行い、ミレニアル層を中心にシェアされ、話題が広がっていくような仕掛けをして、成功を収めた。
後藤氏は当時を振り返り、「チームづくりが何よりも重要でした。一般的にはクリエイティブディレクターがコアアイデアを考え、テクニカルディレクターが実現方法を模索し、クライアントが調整をして…という流れで進みますが、あえて役割を切り分けず、企画から制作、実装までをコアメンバーで全部進めた結果、今までにないアイデアが生まれました。日本には『デジタル分野はデジタルマーケティング部に任せればいい』と考えている人が多くいますが、例えばエンジニアが面白いコミュニケーションプランの原案を思いつくこともあれば、逆にプロデューサーやマーケターの『こんなことができればいいのに』という何気ない一言がテクノロジーに結びつくこともあります。職種に応じて役割を決めてしまうのはもったいないことだと思います」と話す。
事例 モエ・エ・シャンドン「MOËT CHRISTMAS MARCHÉ」
2016年を締めくくる年末のクリスマスイベントとして開催された「MOËT CHRISTMAS MARCHÉ」。これまでのようなオンライン上の体験だけではなく、イベント会場の空間演出や、インタラクティブな体験型コンテンツ、回遊・再来場へつながるデジタルコンテンツなど、デジタルとリアルを連動させたイベントとなった。
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