時代の変化に対応し、変革を続ける広告業界。革新への熱狂と専門知識を武器に、従来の広告の枠を超えて、仕事に取り組む人がいます。そんな広告の世界を拡張させる博報堂社員の仕事術と本音に迫る「熱熱トーク」。第2回は、テクノロジーとプロダクト開発を掛け合わせ、イノベーションに挑むチーム「monom」を率いる小野直紀さんです。広告会社の中でプロダクト開発をする価値、そして、そこから見えてきた新たな広告会社像について聞きました。
「辞表」と書いた資料で役員に直談判
――小野さんは、広告会社の中で“ものづくり”をしている、言わば「異色の存在」です。博報堂で“ものづくり”をするようになった、経緯から教えてください。
博報堂に入社して最初の配属先は「空間デザイン」のチームでした。そこでモーターショーのブースや企業ミュージアム、店舗の企画・デザインを担当していました。当時の上司がちょっと変な人で、「おいっ小野!広告は、いま過度期なんだ!」と、いつも言われていました。そんなこともあって、なんとなく広告におけるリアルな領域の重要性は肌で感じていました。
その後、入社3年目にヤングカンヌの「メディア部門 日本代表」に選ばれて、カンヌに行かせてもらいました。その年は、太陽が昇らない町で、太陽を模した光る巨大なバルーンを空に浮かべて、それを見に集まってきた人たちにジュースをサンプリングするという、トロピカーナのドキュメンタリータッチのCMが受賞したときです。それを見て、改めてリアルの可能性を感じながらも、そのCMの最後に出てくるコピー、日本語でいうと、「いい朝は、いい一日をつくる」がすごく重要だと感じて、やはりブランドの芯をつくるのは言葉だなと思い、職種転換をしてコピーライターになりました。
それから広告制作を担当し始めたわけですが、並行して個人としての活動もスタートしました。友人とプロダクトデザインのユニットをつくり、照明や椅子などをミラノサローネで発表しました。
このプロジェクトへの外部からの評価が良かったこともあって、社内から「小野はそろそろ独立するぞ」と言われ始めました(笑)
――しかし、辞めなかったわけですよね。なぜでしょうか…