音部大輔(資生堂ジャパン株式会社 執行役員)
目的には「いいもの」と「そうでないもの」がある
第1回では、戦略とは「目的達成のために資源利用の指針」であると定義付け、第2回では「目的達成のための資源利用の指針」があると、何がいいのかという議論をしました。今回は、戦略を構成する2大要素のひとつ、「目的」について理解を進めたいとおもいます。「いい目的」とSMACについてです。
「いい目的」と「そうでない目的」があるのだとしたら、「いい目的」を持ちたいものです。それはどのようなものでしょう。そして、「いい目的」があると何がいいのでしょう。分かりやすく考えるために、「いい目的」の設定がない場合に、どのような事態が発生しそうか考えてみましょう。
「いい目的」がないと、どこを目指すべきなのかが不明確で、遠回り、逸脱が頻発するでしょう。そもそも、目的が曖昧なままでは、いま近道を進んでいるのか、遠回りしているのか、逸脱しているのかさえ判断できなくなります。
組織・チームで働いている場合には、個々の間での意思統一がしにくくなります。目的の達成のための直接的、合理的な結束ではなく、個人的な人間関係や組織への帰属意識による結束しかできなくなるのは心もとないものです。目的があると、協調し結束する理由ができるので団結を促すことができます。
目的が不明確であっても、行動計画は策定され、実行されていくことは珍しくありません。曖昧な目的に基づいた行動計画は人々を忙しく働かせるけれど、大きな成果につながるような働き方にはなりにくいものです。ただ現状に従って設定されたスケジュールに合わせて、行動自体が目的化した組織運営になることもありそうです。
「いい目的」の設定があることで、①どこを目指すべきかが明確になり、②それゆえ現状の進捗を把握でき、③組織・チームを「目的」達成のもとに結束させられるので、④その達成の確率を上げられるということになります。