日本カルチャーを後押しするデザイン 映画「君の名は」、アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」、ゲーム「ラブライブ」などのポスターやパッケージ、ツールなどをディレクションする染谷さんは大阪芸術大学芸術計画学科卒業後、SPツールを扱う広告制作会社にデザイナーとして就職。
DMのデザインを担当していたが、「もともと好きだったオタク系の仕事がしたい」と転職を決意。バルコロニーを設立した生本訓昭さんに誘われ、同社に入社した。
当時のバルコロニーは、音楽系の仕事が多かった。そんな中、染谷さんの気持ちは変わらず、2006年に同人誌『OTAKU×DESIGN』を自費出版でつくる。同誌はオタクジャンルのデザインに焦点を当てた評論誌で、取材・執筆・編集・販売に至るまで全てを1人で手がけた。
「僕自身が読みたいものだったし、自分の考えを雑誌で発表することで、多くの人と繋がることができれば、と考えました」。
これをコミケや同人誌専門書店で販売したところ、漫画・アニメ界のプロデューサーや編集者の目に止まり、オタク関連の仕事の依頼が増加。DMなどのSPツールの制作で培った経験をオタク関連の仕事でも存分に生かし、新たな仕事の領域を開拓した。
こうした仕事の広げ方は、大阪芸術大学芸術計画学科で学んだメソッドだと染谷さんは振り返る。
「芸術計画学科はデザインができる人間を育てるのではなく、デザインをビジネスに結び付ける方法を学ぶ場。僕のようにデザインやその周辺が好きで、特別な技術を持たない人でも、やり方次第でカルチャーやアートに関わることができることを学びました」。
染谷さんは自分が取った方法は、デザイナーとして正攻法ではないとも言い切る。
「デザインという山の頂上にたどりつくために、一番効率の良い方法を考えた結果で、自分で自分をプロデュースしたとも言えるかもしれません。デザイン賞、著名なクリエイティブエージェーンシーなどに縁がないデザイナーでもどうすれば仕事を続けていけるか。一つの答えの出し方でもあると思います」。
同人誌『OTAKU×DESIGN』は3号で終了したが、それを発展させて、今後オタクに関する新たなコンテンツとして立ち上げることも計画中だ。そんな染谷さんの独自の視点は、日本のカルチャーコンテンツが国内外で今後さらなる発展を遂げる上で、大きな一助となるだろう。
編集協力/大阪芸術大学