人の言葉には、本音と建前が必ずある。 他人からよく思われたい、傷つけたくない、そんな想いから、つい見栄を張ってしまったり、盛って話してしまったり。そんな体験を、誰もが持っているはずだ。特に就職活動においては、その傾向は顕著であり、就活生も、企業も本音を出さずに話してしまいがち−−。就職活動のそんな側面に注目し、博報堂と博報堂DYメディアパートナーズは今年4月、表情のトラッキング技術を使った「絶対に本音で話さざるを得ない説明会」を実施した。
説明会当日、参加した学生たちは事前には「激論トークLIVE」を実施すると伝えられていた。“学生の聞きたいことにとことん答える”という企画で、同グループのさまざまな職種、年次の社員が登場し、仕事やプライベートなどについてトークを実施した。そして学生からの質疑応答が全て終了した後、今回の説明会が実は「絶対に本音で話さざるを得ない説明会」であり、二つの仕組みが導入されていることが公表された。
その仕組みの一つ目は、「Face Tracking」。これは特殊な技術で人の表情から感情の分析をするもので、社員の説明を聞く学生の表情を分析し、“モヤモヤ度”を計測していた。そしてモヤモヤ度が高かったTOP3が発表され、二つ目の仕組みである「TEAM HONESTY」が始動。その説明をした社員の身近な存在(上司や後輩、同僚、家族までも)がサプライズで登場し、改めて同じ質問に答えるようその社員に促した。社員は驚いたり、しどろもどろになりながらも、真実を知る質問者を前に本音で質問に答えざるを得なくなるというのが「本音で話さざるを得ない」仕組みである。
例えば、アカウントプロデュース職の関根さんは、「ワークライフバランスはどうなっていますか?」という学生の質問に対して、最初は「ワークライフバランスの流れを自分で作ってしまえば、(両立は)大変ではない。自分は子どもが2人いるんですが、毎朝7時からの1時間は子どもと遊ぶ時間と決めて、子どもと遊んでから出社しています」と答えていたが、奥様と2人のお子さんが登場して「1日1時間、子供との時間を持つという話は誰が決めたんでしたっけ?」と聞かれるとバツが悪そうな表情に。「実は、言い出したのは僕ではなく…奥さんからやれって言われて…!正直、家事も奥さんに任せきりです。すいません!」と答え、会場は笑いで包まれた。
説明会は2日間で参加学生人数述べ240名を動員し、参加した学生からはリアルな本音が聞けた、会社を身近に感じたなどの反応があった。
博報堂 人事部は、「広告会社はアイデアで人の心を動かすことが仕事であり、最大の魅力。そのことを就活生の皆さんにも興味と共に理解してもらうために、毎年コンテンツ企画を行っている」と話す。過去には日本一早い会社説明会のような企画を行ったが、今年は就活生が本当に求めていることは「建前ではない、博報堂と博報堂DYメディアパートナーズの本音」だと考え、この企画を採用した。「今回の取り組みが、今後他社でも就活生と企業が『本音で語り合う』きっかけになれば」という。
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