長尺動画にも関わらず、完全視聴率は通常平均の6.2倍
—薬用マウスウオッシュブランド「リステリン」ではコミュニケーションやメディア戦略を大きく転換したと聞きました。
「リステリン」は、2年前からコミュニケーションメッセージ自体を「大胆に生きよう!」に変更し、情緒的な価値訴求を強めています。「リステリン」は、世界シェア1位のブランドですが国内市場に目を向けると、マウスウォッシュカテゴリーの使用率自体が、ここ5年横ばい傾向にありました。以前は歯肉炎に効く、バイオフィルム(口内細菌の塊)に浸透し、殺菌するといった機能を謳っていましたが、このメッセージでは口内環境に意識の高い一部の人にしか響いていないのではないか。そんな考えから「大胆に生きよう!」のコンセプトのもと、マウスウオッシュ自体に興味を持ってもらえる層のすそ野を広げる活動をしてきました。
今年のバレンタインデーの時期には30代~40代の男性を対象にWeb動画を制作。男性が筧美和子さんといい雰囲気になって、キスできそうになるのに、最後はビンタで殴られてしまう。その理由は動画を最後まで視聴しないとわからないという設計にしました。動画の配信に際しては、利用者がツイートをすることで動画の続きを見ることができるTwitter広告の一つであるカンバセーショナルカードを活用しています。
ビンタされてしまうのは口臭のせいなのですが、そのストーリーを男性目線と女性目線の2パターン制作。男性目線の動画を見たあとに、カンバセーショナルカードで「#なんで」とツイートすると、女性目線の動画を比較して見られるよう設計しました。
配信した動画はクリエイティブにもこだわりました。最初に担当からあがってきたシナリオは、女性のセリフが「口の中の25%しかケアしてない男とキスなんかしたくない!」みたいな、「リステリン」のパッケージに書いてある商品説明のような文章が入っていたのです(笑)。それでは見たいモチベーションも、リツイートしたいモチベーションも喚起しない。ストーリーはもちろん、リツイートしたい気持ちを喚起するための筧さんの起用が鍵になったと考えています。
Twitterは利用者の反応がリアルタイムに見えるので、反応を確認しながら、キャンペーン期間中もクリエイティブを変更。結果、5分という長尺の動画にも関わらず、配信した動画の完全視聴率がTwitterの平均と比較して6.2倍、またキャンペーンを開始後、ECサイトでの「リステリン」の売上げが2桁増という結果につながりました。
デジタルの施策の良いところはすぐに結果がデータで見られること。データを見ながら、リアルタイムに施策を改善・調整する判断は、私の承認はいらないと部下には話しています。キャンペーンが始まったら終わりではなく、常にデータを見ながら最適化し続けていくことが必要だと考えているからです。
Twitter日本初のライブ配信を活用した新キャンペーンを企画
—コミュニケーションメッセージの開発に際しても、SNSでの話題を始めとするお客さまの声を重視していると聞きました。
例えば、ここ数年「ジョンソン ベビーオイル」が赤ちゃんのマッサージ用途だけでなく、大人の女性の美容アイテムとしてジワジワ人気になっているんです。洗顔フォームに混ぜる、ヘアワックスに混ぜるなど、実はいろんな活用ができるという話がSNS上で拡散をしていました。
せっかく生まれた良い流れを捉えようと、昨年は女性を対象に「これ一本で全身ふるふわ。愛され、赤ちゃん肌になろう」というキャンペーンを実施。14通りの「ジョンソン ベビーオイル」の活用法を提案しました。さらに若い女性をターゲットにしていたので「ハローキティ」とコラボした期間限定パッケージも販売。フォトジェニックな演出も功を奏し、バズがバズを呼ぶ、とてもよい循環ができました。
その状況や私たちの日頃の課題をよくお話していたこともあり、日本で初めてTwitter Liveで配信をするイベント「U-Fes」へ出稿させて頂くことになりました。このイベントは動画クリエイターの方々が集まるもので、ファンに受ける動画づくりを熟知しているクリエイターの方々に、作ってもらった「ジョンソン ベビーオイル」のCM動画をライブ配信中にミッドロール広告として配信。また、イベント後には、イベントのハイライト動画に企業のCMを入れて配信する「インストリーム動画スポンサーシップ」も行いました。
クリエイティブ自体を動画クリエイターの方とコラボレーションしながら制作でき、イベントとの親和性が高いもの配信したため、ユーザーの方からは非常にポジティブな反応がありました。完全視聴率単価も通常平均4分の1ということで、ライブ配信の可能性を感じました。