モノを売るのではなく付加価値を売る
—では、社内のマーケティング部の役割とはなんでしょうか。
江崎:商品そのものに自信がなかったら、発売してはいけない。江崎利一は、発売前の企画段階で99%の自信を持てるだけの仕事をしろと。あとの1%は発売してからでもいいと言っていました。
発売した後は、商品名を浸透させるための継続的なブランド投資が必要。つまりは広告です。「プリッツ」や「ポッキー」も発売当初は聞きなれない、不思議な名前だと思われていてもテレビメディアを中心に、50年来ずっと投資をしてきたから今があるのです。
—情報・メディア環境が激変し、また消費市場もコモディティ化、飽和状態になりつつあります。今の環境において、機能する「広告」のあり方をどう考えていますか。
江崎:全ての基本はマーケティング。マーケティングとはモノを売ること。では、お客さまにモノを買ってもらうために、新しい需要をつくるためにはどうすべきか。それは、今あるものにプラスαの付加価値をつけることが一番です。
モノを売るのではなく、付加価値を売る。それは基本的には今も昔も変わりません。創業当時に、キャラメルにグリコーゲンを入れ、「ひとつぶ300メートル おいしくてつよくなる」のキャッチフレーズで栄養菓子「グリコ」を発売した時も、まさに付加価値を商品の価値にしていたわけです。そこで重要になってくるのが、広い意味での広告。付加価値を認めてもらえなければ、価格競争に陥るだけです。それらと対抗していくのは不本意だし、なかなか大変。こうした戦いをやらないために、率先してもっと上を、もっと新しいものを生み出していかなければならないのです。
当社の社是には、創意工夫という言葉があります。その判断基準は、お客さまが買うかどうか。スポットではなく、継続的にです。
グリコのおもちゃもそうだけれど、付加価値という観点におけるすべての発想の源は、消費者に対する長期的なファンづくり。これは、今この時代にも大変重要なのではないでしょうか。
江崎グリコは95年やってきて、売上が数千億円だなんて情けないこと。もっと歴史の浅い他社に抜かれているなんて、今までなにしてきたのか、と思わなくてはいけない。もちろん売上だけではないけれど、その時々でどういう長期目標をもってやっていくかが大事。つまり、広告が一番大事。これからも、玉井君がキーパーソンというわけですな(笑)。
玉井氏: 非常に勉強になりました。ありがとうございました。
(本インタビューの全文は『宣伝担当者バイブル』でご覧いただけます)。
- 著者/玉井博久
- 発行所/宣伝会議
- 価格/本体1,800円+税
大手広告会社側と広告主側の両者を経験し、今まさに広告主として広告と向き合う著者が、 いま広告主が何を考えているのか、クリエイターが何を考えているのかを接着剤となって紐解きつつ、 広告のプランから実行、結果の振り返りまで、 広告をリードする広告主になるための姿勢と方法を伝える、すべての広告主のための1冊。