コトバがない広告って、つまんなくないですか?福部明浩×小杉幸一×尾上永晃×福里真一【後編】

コトバがないと、つくり手もつまらない

福里:それでは、今日は司会ですので、私の話はごく短めにさせていただきますね。
広告のコトバが伝わっていくために、文脈が大事だとか、どう拡散させていくかとか、そういう話も重要だとは思うのですが、あんまりそういう話ばっかりでも考え過ぎて疲れちゃう、というところもあると思うんです。

「コトバがない広告」は、つくり手にとっても「つくりがい」がなかったり、面白くなかったりするのではないか。逆に、コトバを考えることこそ、広告づくりの一番面白い部分なのではないか。ちょっとそういう視点でお話しさせていただきます。

私が担当している、サントリー「BOSS(ボス)」の宇宙人ジョーンズ・シリーズは、この4月で担当して12年目に入りました。ボスのキャッチフレーズである「このろくでもない、すばらしき世界。」は、ブランドの世界観を伝えるコピーとしてもちろん大事です。ただ、CMでメッセージを伝えるという意味では「この惑星の~~は、~~だ」という、宇宙人ジョーンズのモノローグの部分を考えるというのが、BOSSというCMのコトバを考えることなんですね。そしてそれが面白い。

なにしろ宇宙人が言っていることですから、「この惑星では」を付けさえすれば、たいていのことは許されますし、たいして深いことを言っていなくても、何か深いことを言っているように聞こえる。自分で言うのもなんですが、なかなかの発明だと思うんです。

たとえば、人類ってなんでこんなに頑張るんだろう、疲れるなぁ、という自分の普段感じている思いをそのままコピーにすると、「地上の星」篇のモノローグ、「この惑星の住人は、川を見れば橋をかけ、山を見ればトンネルを掘る。自ら壁を見つけてはそれを乗り越えようとする。一体どこに向かおうとしているのだろうか」というものになったりする。

特にどなたからも褒められたことがないので、いま自分で褒めているわけなのですが(笑)、このフレームがあることによって、自分が思っていることを自由に世の中に発信できる。
せっかくコピーライターという仕事に就くことができたのですから、こんなふうにもっとコトバを書くことを楽しんでもいいと思うんですよね。

福部明浩さん
1976年兵庫県出身。98年博報堂入社。2013年独立し、catchを設立。主な仕事に、カロリーメイト「とどけ、熱量。」「見せてやれ、底力。」「それは、小さな栄養士。」、ビタミン炭酸MATCH「青春がないのも、青春だ。」、グルメな卵きよら「きよらのお布団をかけてください。」、クラシエHIMAWARI「青いヒマワリ」、EDWINジャージーズ、ゾエティス「血ぃ吸うたろか〜」「かい〜の」など。著作に、『いちにちおもちゃ』など絵本数冊。中国、韓国でも翻訳され発売中。

福部:僕も最近CMの仕事ばかりしているのは、CMが楽しいからです。BOSSのCMは本当にあらゆる事象を取り込んでいけますよね。今回のトークイベントの事前の打ち合わせで話していて面白いなと思ったのが、福里さんが「山の8合目あたりをぐるぐる回っていて、高みに上るつもりはない」と言い切られたことです。

でも、それもすごく大事だと思います。先ほど尾上さんがウェブではユーザー側の視点が大事だと言っていました。いまの時代は「下から目線」の方が語りやすいですよね。ただ、ジョーンズは超「上から目線」ですが(笑)。

尾上:どういう人物が、それを語るのかということは重要ですよね。なぜこれを、この人が批判するんだって、炎上騒ぎの根本もここにある気がします。
これはメディアの構造上そうなんですが、テレビは上意下達で、ウェブは下から生まれてきたメディアなんで、企業側が発信するときも大事なことは常に受け手の思いに寄り添う“下から、もしくは横から目線”だと思っています。

次ページ 「『コピー年鑑』の有効活用」へ続く

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