日本はPRが苦手なことで損をしている。世界の関心に向き合う「戦略PR」 — 本田哲也(ブルー・カレントジャパン)

「みんなの関心」とどう結びつけていくか

PRする対象が何であれ、それが洗剤だろうが自動車だろうが銀行だろうが、戦略PRのキモはひとつ。それは、企業や商品といった「あなたの関心」を、広い世の中の「みんなの関心」とどう結びつけていくかだ。これを表したのが「関心テーマ」のフレームワーク(図1)。

3つの要素を結ぶ真ん中に「関心テーマ」がある。この三位が一体となる「テーマ」を見出し、そのテーマを世に広め増幅させることを目指すのだ。これは世界に向けても応用できる考え方だ。

■図1

1.企業や商品の便益:商品が役に立つところや差別化点は何か

日本人ではない客観的視点をいれた「翻訳」が必要になる場合がある。例えば日本では当たり前のニーズが、他国では当てはまらなかったりする。「日本」ということ自体が差別化点になることもあり、便益性がどこに見出せるのかは日本市場とは違った観点で再検討する必要がある。

2.世の中の関心事:世間が気になっていることは何か

グローバルイシューやローカルイシューの理解、分析が欠かせない。世界のPR成功例はグローバルイシューをうまくとらえているものが多い。日本人には自分ゴトに感じられなくとも、活用しうる社会関心は少なくない。なぜそれが関心事になっているのか、そのコンテクスト(文脈)もしっかり把握する必要がある。

3.生活者の関心事とメリット: 商品を使う人が気になっていることは何か

その地域のコンシューマーインサイトの調査分析が欠かせない。どうすればその関心やインサイトに寄り添うことができるかが重要だ。また、地域や文化の異なる複数のエリアを包含する場合は、ここをあまり細かく捉えると失敗する。国や文化を超える普遍的なインサイトにブリッジする必要がある。

今、日本に必要なのは、東京オリンピックというイベントを世界に向けて「宣伝」することではない。この好機をとらえ、長期的な視点で日本という国を「PR」することだ。それには、「日本と関わることの意味」を訴求することがポイントになる。それが企業であれ個人であれ、「日本と関わりを持つと私(たち)はどうなるのか?」という問いに対する答えが重要なのだ。

日本を売り込むのではなく、「自分たちがどう変われるのか」という普遍的な相手の関心を、日本の強みにブリッジさせるのだ。日本の「空気」をつくるためのヒントはそこにある。

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