ACC賞マーケティング・エフェクティブネス部門は宣伝部が獲得して「うれしい賞」 — 矢野絹子(KDDI)審査委員長

広告主の思いがどこよりも熱いME部門

—エントリーするのは広告主の方ですよね。

矢野:広告会社と一緒になって、広告主の名前でエントリーする形です。ME部門は、クリエイター個人というより宣伝部と一体のチームに向けた賞と言えます。

昨年グランプリを受賞したアキタも、課題に対してチームがどれだけ向き合えたのか、という点が結果に表れています。企業の思いだけでもなく、クリエイティブだけでもない。戦略とクリエイティブががっちりはまった時のパワーが、最も大きく評価される部門ではないでしょうか。

この賞をもらったときの広告主側の喜びは、何にも代えがたいものがあると思います。もちろんフィルム自体を評価されることも嬉しいのですが、広告主側が思いがより入ってくるのはこの部門。エントリー映像を見ていても、広告主側の熱さも、クリエイターの熱さも、両方感じるんですよね。審査も熱くなるので、疲労困憊するんですけど(笑)。

審査委員もチーム一丸となって議論します。意見を戦わせるというより、知見を出し合って、我々がどういう思いでどの作品をナンバーワンにするかというのを議論している感じです。

—女性審査委員が半数を超えているというのもME部門の特徴ですね。

矢野:一昨年から、女性審査委員を増やしているんです。それまでは全員男性で審査していたのですが、世の中の半分は女性ですし、特に消費財はメインターゲットが女性であることが多いですから。

自分が審査委員に加わって感じたのは、女性視点が入るとこの領域はおもしろいということ。とある女性向けスキンケア商品のキャンペーンに対する男性と女性の意見が、真っ向から違ったことがあったんです。男性側は「いいクリエイティブだ」と評価したのですが、女性側は「でも買わないね」と。つくりとしてはきれいにできていたんですが、消費者として女性が見ると「エフェクティブに至っていない」。そういう意見のやり取りがおもしろかったですね。こういう議論ができるのも、この構成だからこそですね。

—審査員としてに限らず、広告賞全般について何か思い出はありますか?

矢野:私は宣伝部を担当して4年になりますが、最初は賞なんて無縁でした。悔しさ半分、言い訳半分で、「別に賞のために作ってるわけじゃない」と言っていました(笑)。ただ、実際に賞をいただくと、世の中からの見方が変わるだけでなく、社内の空気もいい方向に変わるんですね。

「我々のやっているプロモーションは賞をいただけるものなんだ」と、社員もシャキッと胸を張る。宣伝部の仕事は社内ではなかなか評価されにくい中で、対外的にきちんとした評価をいただくと、非常にモチベーションが上がります。

賞のためじゃなくてやっているプロモーションを評価された、というのが嬉しい。もちろん世間でも目立つようになりますし、「賞も獲って、いまノッてるね」と見てもらえるのはブランドとしてもとても大きい。ただ、一度いただくと「獲りつづけなきゃ」というのが苦しいところではありますが(笑)。

(ライター:矢島 史)

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