社員が「行動を省みる」言葉を
──平山さんはBtoB企業のお仕事が非常に多いですが、強い「言葉」を生み出すプロセスをぜひ教えてください。
過程を明確に説明するのは難しいですが、「他の企業に似ないようにする」。これは非常に大事です。コンセプトはもちろん、平仮名や漢字の配分、レトリックといった細かい表現も含めて「その会社でなければ言えないような言葉になっているか」ということを重視します。
そういう言葉を見つけるためには、やはり人に会うことが一番早いと思います。トップや現場の方とお話していると、その会社の人格みたいなものがにじみ出てきます。例えば工場に出向いて、現場の方とお話ししてヒントをもらうこともあります。ほんの短い時間であったとしても、20人から30人ぐらいの人には会って話を聞いています。
特に大手企業の場合は「他部署の事業内容が分からない」というケースも少なくありません。広告を見て、初めて自社の事業を知るという社員もいます。当然、一般の人よりも社員の方が商品やサービス、事業に対する関心は高いはずですから、広告で情報を得た社員が発信者となり、ステークホルダーに情報を伝えるという流れも起こります。
BtoB企業の中には、マス広告を出稿したタイミングで事業を詳しく解説した広報ツールを制作するケースもあります。社内報を使って情報共有するという方法もあるとは思いますが、イントラネットのサイトを見に行くのは面倒だと思う人も多い。パンフレットやリーフレットなどの印刷物を社員全員に配布し、手元に置いてもらうようなスタイルが多いですね。印刷物は営業ツールとして活用することもできますから。
BtoB企業の情報発信は2種類あると思うんです。ひとつは、広報が手がけるニュースリリースのような、専門家に刺さるキーワードや切り口が盛り込まれた情報です。
現場の技術者や専門家には響きますが、商品やサービスの購入や取引を決定する経営層は専門家でない場合もあります。すると最終的に、企業の知名度で選ばれることも多くなります。だからこそBtoBであっても、広く関心を集める入り口として理念やメッセージを発信する必要があるのです。
同時に、社員がお客さまに対するメッセージを見たとき「自分たちはその言葉どおりに行動できているだろうか」と省みるような言葉になっていれば、その会社は企業理念に掲げる”あるべき姿”へと変わっていけるはずです。
「宣伝会議コピーライター養成講座」とは?
宣伝会議コピーライター養成講座は日本で最初のコピーライター養成機関として、1957年に開校。今年で60周年を迎える。数多くのトップクリエイターを育成し続け、のべ5万人を超える修了生を輩出。近年では、広告宣伝だけでなく、広報領域も含む、言葉を使ったコミュニケーションのスキルを高める場として、多くのビジネスパーソンが講座を利用している。