Aカテゴリー、チャンスですよ。
田中:Aカテゴリー(テレビCM)とBカテゴリー(Online Film)を分けることの目的や、それぞれへの期待はありますか?
澤本:分けざるを得ないんですよね。秒数によって表現できるものは違うし、もともと見るデバイスが、スマホだと思ってつくるのと、テレビだと思ってつくるのでは違うから。それによって秒数という制限がある中での競争と、ある程度制限なく–でも長すぎてもつまんないと思うんで、そこら辺の制限を自分で付けながらやるという競争で、両方褒めたほうがいいと思う。まあだから、短距離走とマラソンで両方褒める感覚に近いですかね。
田中:両方とも魅了できるものがありますもんね。
澤本:もっと言うと、Bカテゴリーで応募する方って若いと思うんですよ。そっちもちゃんと褒めたい。
田中:Bカテゴリーに関わらず、若手に向けてメッセージがあれば。
澤本:Bもいいけど、Aカテゴリーがチャンスですよ、と。ずっと、そこそこトラディショナルなものが獲っているし、安定しているので。今までのは違うんじゃないのと思っているなら、エントリーすることでそれをちゃんと言ってほしいなと思いますね。またBカテはBカテで、楽しいけれど素人がやっている感じのものも多い。やっぱり全員、何かしら広告のプロとなってほしいと思うんですけど。Bカテでしかエントリーできないと思っている人は、そんなことないのでAカテにも参戦してみてください。
田中:審査委員の中に、長いドラマを撮る人と15秒が得意な人と混在するわけですからね。いろんな刺激がありそう。澤本さんは映画も撮っちゃうんですもんね。
澤本:もともと、映画をつくれるような素地はなかったと思います。CMをやっているうちに、セリフを書けるようになって、CMの視点で映画をできるようになった。感謝しています。
田中:CMでも映画でも、対象者がいて心を動かしていく最高の仕事だと思います。今事業構想大学院で事業構想や地方創生に取り組んでいるのですが、皆さん口をそろえて「世の中で一番難しいのは、自分たちを理解してもらうことと、伝えること」とおっしゃるんです。それに尽きるというから、まさにすべてにおいてクリエイティビティが大事と言えますよね。その分野のプロは本当に求められています。何かを発信したいと思っている人に、ACC賞が新しいクリエイターに出会うきっかけを与えられたら。
澤本:動画というのは素晴らしいものなので、CMもテレビも映画も、動画を使ってのコミュニケーションをもっと楽しくしたいと思います。ジャンルに関わらず、業界関係なく、「動画」に来たいという人を増やしたいし。これは言いすぎたらよくないんだけど、審査においてなるべく、残すか落とすか迷ったら残してあげましょうと言おうと思っているんです。
だいたいみんな、こうなると厳しくなって微差でも片方落とすでしょう。あれ、両方残せばいいじゃない、と思うんですよ。全体の応募数を考えても、数本増えたって微差でしょう。納得されたうえで、褒められてうれしい人が増える分にはいいじゃないかと思うんです。
田中:本気で戦う審査がしたいですね。さまざまな観点でおもしろいとか、世の中の人を驚かせたとか。目標もそれぞれバラバラでいろんな基軸がある中、一定の効果を上げながらみんなに何かを残したよね、というものを選んで残したい。当社も編集をお手伝いしている『ACC CM年鑑』は、日本の広告の現状や、トップクリエイター、メディア、広告主のアイデアや、社会に対する思いが凝縮されるものです。形態や見せ方はさらに楽しくできるところと考えています。
(ライター:矢島 史)