「パナソニック宣伝100年の軌跡」(3)時代を切り拓く創意工夫 — 空調の広告篇

売り場に室外機を展示。機能を伝える創意工夫

-お二人が関わった、空調の広告は当時、大規模なキャンペーンも行われていましたが、パナソニックの広告戦略には、どのような特徴があると思われましたか?

小森秋雄(クリエイティブディレクター、アートディレクター)
1976年、博報堂に入社して以来、「エオリア」などパナソニックのグラフィックやCMをはじめ、様々な広告の制作に携わった。Asian Advertising Awardグランプリ、カンヌライオンズ銅賞など受賞。2010年に退職。

小森:エアコン売り場で、エオリアの室内機ではなく、室外機が展示されたことがありました。通常、お客さまがエアコンを検討するとき目にするのは室内機です。いくら特徴がコンパクトな室外機でも、そこまではなかなか踏み切れません。素直にすごいと思いました。徹底的に製品を中心に据える宣伝の発想と、大胆なアイデアの採用がパナソニックの広告の特徴だと思います。訴求ポイントである室外機の幅は、石田さんの肩幅とほぼ同じだったので、石田さんに手で幅を示してもらい、CMシリーズのアイキャッチとして使い続けました。

石田:覚えています。“前にならえ”のようなポーズですね。イルカと一緒にこのポーズをしたCMもありました。

小森:水泳が得意な石田さんに、バハマの海でイルカと立ち泳ぎをしてもらいました。ちょうどイルカの胸びれが「前にならえ」のように見えることからつくった広告です。

03. 1993年 テレビCM「ひかりのバーテンダー」

石田:「ちいサイズ」が伝わる工夫ですね。

小森:実証的という点もパナソニックの宣伝における特徴です。振動の少なさを表現すべく、室外機の上にカクテルグラスでタワーをつくった広告もそのひとつ。さらに広告だけでなく、草津工場に「エオリアハウス」をつくって製品を体感できるようにした取り組みも、当時は新鮮でした。

-エオリアのCMに携わられた5年間は、お二人に何をもたらしましたか?

石田:パナソニックの製品は小さいころから家にあり、なじみ深いブランドでしたから、広告に出演すると決まったときは、親もとても喜んでくれました。

100人ぐらいでアトランタオリンピックの会場までヤワラちゃん(柔道家の谷亮子さん)を応援しにいくツアーなど、貴重な体験もさせてもらいましたね。

04. 1997年 雑誌 スクロールエアコン エオリア

小森:そうでした。エオリアの小さくてもパワーがあるという特徴から、ヤワラちゃんに広告にご出演いただいたんです。CMやポスターだけでなく、店頭施策からイベントまで、立体的に連動させていくキャンペーンで、より宣伝のパワーが増していくのが分かりました。新しい広告メディアを組み合わせたり、ヤワラちゃんのようなスターを起用したりといったことが、パナソニックは本当に上手で、エオリアの広告をつくる中で、私自身、すごく勉強させてもらいました。

石田:製品に自信があるからこそだと思うのですが、パナソニックのCMを見ていると、押し付けがましいところが感じられないんです。間もなく創業100年を迎えられるとのことですが、そうした「品のよさ」は、これからの広告でも継続していってほしいと思います。

-パナソニックのエアコン事業は、開始から60年が経ち、今や家電にとどまらず、ビルやトンネルといった大型空調にまで、領域を広げています。社会の変化を機敏に読み取り、市場に影響を与えてきた、パナソニック流の宣伝。創意工夫は、続いています。

空気の質から、くらし・社会の質へ

2016年 新聞 「ナノイー」技術ソリューション

空調機器は扇風機やこたつ、あんかの時代から、クーラー、エアコンを経て、より快適性を求めることで進化していきました。暑さ寒さをしのぐだけでなく、花粉やハウスダスト、PM2.5の除去といった空気の質も、空調機器には求められるようになりました。

今やパナソニックの空調機器の舞台は、住宅、ビルなどの施設にとどまりません。山手線の新型車両E235系に「ナノイー」を搭載した空気清浄機が採用されたり、ヒートアイランド対策に屋外用エアコンを開発したりと、より広い領域で活躍。さらにエアコンに搭載された温度/湿度センサーを、高齢者向け住宅の見守りに生かす「みまもりエアコンサービス」のような、新たな価値を提供しています。

部屋の温度調節に始まり、くらしや社会の質に関わるまで進化したパナソニックの空調機器。今後、時代の空気を一変させる発明が、ここから生まれるかもしれません。

空調宣伝年表

at0601009

編集協力:パナソニック株式会社


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