ACC賞ラジオCM部門 過去の受賞CMも聴ける!嶋浩一郎審査委員長×「アンダー29」受賞者座談会「ラジオは人の感覚をくすぐるメディア」

ACCが主催する「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS(ACC賞)」のラジオCM部門で、20代の若手クリエイターに賞をおくる「アンダー29」。2015年と2016年に受賞した電通 関俊洋氏と武田さとみ氏、大広 三宅幸代氏の3名と、ラジオCM部門の審査委員長をつとめる博報堂ケトル 嶋浩一郎氏による座談会を開催。受賞後の変化や仕事の進め方、賞を獲るための工夫、そもそものラジオの魅力などについて話を聞いた。
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ラジオCMの収録が、全仕事の中で一番楽しい

嶋:前任のラジオCM部門の澤本嘉光審査委員長が、「ラジオCMは若者が挑戦できる場」「挑戦している若手を応援したい」という意図で2年前に作ったのが「アンダー29」という賞です。受賞した皆さんが今、どんな仕事をしているかなど、話を聞けたらと思っています。まずは自己紹介をお願いします。

関:電通の関俊洋です。入社6年目になりました。コピーライターもしていますけど、どちらかというとCMプランナーといったほうが当てはまるかもしれません。CMの仕事が多くて、特にラジオCMは去年25本くらいつくりました。

武田:うわ、いいな~。

三宅:25本もひとりで、回してるんですか?

関:はい。ラジオだけは最後までやりたいし、手放さないようにがんばっています。10年ほど経験すると、「ラジオは若手に譲ろう」みたいな雰囲気がありますけど、一番技術が必要とされるものだと、今の段階では思っているわけですよ。ラジオは絵でごまかせないし。だから、せっかく培ったものを止めることなく、ずっと取り組んでいたいと思っています。

武田:私にとってラジオは、ずっと東京ガスさんとワコールさんに育ててもらっている感覚が強いです。ただ、去年いろいろ仕事に入りすぎてしまったので、仕事をぐっと減らしてしまって、今ラジオの仕事がなくなっているんです。やりたいとは思っているんですけど。

三宅:私は入社6年目ですが、最初の3年間は別の部署にいたのでクリエイティブ歴は約2年です。ずっと異動したくて、一般の公募広告賞をきっかけにようやく異動できました。テレビCMをまだ担当したことがなくて、ラジオCMもこの受賞作が、初めての仕事だったんです。

嶋:初めてつくったCMが「アンダー29」を獲ったんだ。それは、ラッキーだったね。

三宅:本当に助かったな、という感じです。普段はあまりラジオの仕事がないので、これをきっかけに増やしていけたらなと思います。

嶋:それぞれの作品に関して、工夫したところやポイントは何かありますか?

武田:「カーネギーホールへの道」はどこから考えたんですか?調べるところから?


※関さん2015年入賞作品:パイオニア販売「カーネギーホールへの道」 音源&スクリプト

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関俊洋(電通 / CMプランナー)

関:よく覚えてないんだよな…。その時の状況としては、これで賞を獲らないと飛ばされるんじゃないかという恐迫観念がすごくて、獲るためのネタはないかなと探していました。クライアントの担当者がラジオCMをつくったことのない方で、これはラジオのおもしろさを知ってもらうチャンスだと。以前、カンヌ受賞作とACC受賞作を20年分さらった時に、おもしろいと思ったラジオCMをピックアップしておいたんですね。それをクライアントに聴いてもらったら、「こういうの、つくりたいです」と言ってもらえて。

嶋:テレビCMは、けっこう大掛かりなプレゼンになるけれど、ラジオだと若手に任せてもらって仕事を進めるケースも多いよね。

関:「最後の一行でしか言いたいことが言えてないけど、大丈夫ですか?」と聞かれましたけど、メンターも連れて行って「大丈夫です!」と口説き落としました。

嶋:これ、すごくよくできているよね。ラジオは、最初にシーンを想像させたら勝ちなんですよ。「おじいさんがいました」ってセリフを言ったら、ラジオを聴いている人はそれぞれ老人を頭に思い浮かべるじゃない。それさえできちゃえば、後はCMがどんどん別のシーンに連れていける。だから、このCMの場合「女性が男に道を尋ねた」というのを頭の中で想像すれば、あとは最後まで連れていけるんです。そして最後に商品の話をするというのは、すごく効果的だよね、実は。

関:あと大事にしたのは「間(ま)」ですかね。「男は答えた。努力あるのみですよ」の後に長い間を取りたいなと。原稿に「間」って書いて5、6行改行して。それくらいですかね。でも僕もこれがつくりはじめて2、3作品目で、まだやり方がわからなくて。もっとこうすればおもしろかったのに、と思います。

嶋:武田さんの作品のポイントは?

武田:私もラジオCMがすごく好きで、ACC受賞作をものすごく聴いたりして。

嶋:じゃあ、過去の受賞作もそうとう聴き込んだんだね。

関:僕もそうとう聴いてます。

嶋:いいねぇ~! やっぱり、過去の名作にヒントが溢れてるよね。

武田:本当におもしろいんですよね。自分はネタを積んでいって、おもしろいのをつくるというのが苦手で、だからこの「10人10色」は初めてそれに挑戦した作品なんです。つくっている時は難しくて、つらかった。それにデスクで、電話で「この“おっぱい”は~」と連呼して周りから「武田は何の仕事をしてるんだ」と。


※武田さん2015年入賞作品:ワコール「10人10色」 音源&スクリプト

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武田さとみ(電通 / コピーライター)

嶋:(笑)電話でずっと、おっぱいおっぱい言ってる。へんなヤツだよね。

武田:こんなにも「おっぱい」を連呼していいとOKがでるまで、5年くらいかかっているんです。最初は「バスト」「胸」くらいで、おっぱいはNG。先輩たちが何年もかけてつくってきてくれたワコールさんとの関係性の中で、今年は「おっぱいあり!」となったところに乗っかれました。こういう信頼関係は、ラジオが少人数でつくるものだからこそ、個人的なつながりを感じながら企業との信頼関係を築ける仕事だと思います。

嶋:ラジオCMは得意先も含めてスモールユニットで作業を進められるから意思統一が明確になるし、得意先とも一体感がでるでしょ。

武田:楽しいです、人となりがわかる方と仕事した方が。ラジオCMの収録をしている時が、全仕事の中で一番楽しいです。

関:僕もスタジオが一番楽しいですよ。全責任が自分にある感じ。テレビCMはどうしても監督の意向が大きいんですが、ラジオは「そこはこうしたい」と強く言っても大丈夫な空気がある。あと上がいないし。

武田:キャッキャしちゃうほど楽しいですね。間

一般社団法人ACC
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