—帆刈さんは、2014年にタイに設立された博報堂生活総合研究所アセアンの所長を務めています。どのような経緯で就任されたのでしょうか。
博報堂はアセアンの5カ国、タイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ベトナムに拠点を持っています。私は2013年の秋からタイのバンコクに駐在をして、リージョナルマーケティングプランナーとして各国の拠点を支援するという動きをしていました。また同時に、アセアンを博報堂として強化していくため、「生活総合研究所を立ち上げよ」というミッションをもらい、所長をすることになりました。
—ちなみに自ら希望を出して、バンコクに行かれたのですか。
そうです。アセアンのマーケティングに知見を持っている人が社内でまだ少なかったので、格好よく言えば、リバースイノベーションをしたいなと。アセアン発で新しい動きに先行して取り組んで、逆に日本に戻していくということを目標に掲げました。
博報堂の人たちは、私も含めて「生活者発想」という言葉が大好きでよく使います。それを、アセアンからもっとリアルに突き詰められるのではないかと思ったんです。生活者をきちんと理解して、それを具現化させて企画に進化させていくことを、アセアンからやっていきたいな、と。
—博報堂生活総合研究所アセアンは、どのような組織なのでしょうか。
アセアンの5カ国で現地調査を行い、その成果を1年に1回、アセアン各国でフォーラムを開催し発表しています。もともと生活総合研究所(以下 生活総研)は、博報堂の哲学でもある生活者発想を具現化して世の中に見せていく組織として1981年に日本で生まれたので、すでに36年の歴史があるんです。とはいえ、アセアンの場合は、まだ立ち上げられたばかりで、日本からの出向者は私含めて2人しかいません。
そこで、各拠点に「現地スタッフを参加させてくれないか」、「人を借りますが、アウトプットを提供します」と拝み倒しました(笑)。その結果、今はタイから6名、インドネシアとマレーシアから2名、シンガポールとベトナムから1名ずつ参加してもらい12名ほどの集団になりました。
—知らない土地でゼロからつくられたわけですが、大変だったことはありましたか。
初めた当初は、大変なことだらけで、社内外の協力者を募るところからスタートでした。始めのころは、仕事への向き合い方や価値観の違いもあって、なかなか思い通りにいかなかったですね。
去年くらいから、ようやく各国からポジティブな反応が得られるようになりました。
—評価が高まった理由はどこにあるのですか。
やはり、一番の要因はクライアントからの評価だと思います。フォーラムに参加したクライアントから「面白かった」「役に立った」「博報堂はビッグピクチャーに投資する素晴らしい会社だ」という感想をもらって、多少は認めてもらえる存在になったのかなと思います。
—フォーラムではどのような内容を発表するんですか?