BenQ の日本戦略、クチコミ効果で製品が品切れになったことも

ファンと一緒にブランドを育てたい

藤崎:気になる点としてお聞きしたいのは、アンバサダープログラムでの、BenQ本国との目標設定です。話せる範囲で教えてください。

下平:やはり数字としての目標があります。特に冒頭にお話した「SW2700PT」のアンバサダーイベントの影響で製品が品切れになった事例があるので、その成功体験を他のカテゴリーでも応用できないかという話はよく出ます。やはり本国が気にしているのはレビューの数や、SNSでどのくらいクチコミが拡散されるのかなどの数字面です。

ただ、日本側としてはもちろん数字も重要ですが、BenQブランドを長期的にどう育てていくかという視点も大切です。そもそもBenQブランドが置かれている立場が台湾と日本では違います。台湾ではBenQブランドは、日本の有名家電メーカーと同じようなポジションです。ただ日本は競合企業がたくさんありますし成熟市場ですので、それほど簡単ではありません。

藤崎:確かにそうですよね。そもそもBenQブランドを知らない人はまだまだ多いはずです。

下平:ですので、BenQブランドの確立には今、お使いのファンの方の声が大切なのです。

個別の製品それぞれの評判やクチコミが相乗効果をもたらすことで、BenQブランドを全体的に底上げできるはずです。それはきっと販売にも必ずつながるはずです。その一連をどういうふうに見せていくかは、日本法人が本社に対する課題だと考えています。

藤崎:新規参入という意味で、BenQさんの挑戦は素晴らしいと思いますので、私としては応援したい気持ちです。今後の課題や目標について教えてください。

下平:課題や目標はいくつかあります。

下平:まず、「製品がたくさんある」というBenQの特徴は、裏を返せば課題でもあります。それぞれのユーザー層が全く違うので、それをどう統合させるかという点で課題です。

例えば、ホームプロジェクターのアンバサダーの方、カラーマネジメントのアンバサダーの方、eスポーツのアンバサダーの方、みなさん違う属性の方々なので、彼らとどうプロモーションして行くのかは今後の課題です。

その一つの方向として、今は製品ありきで施策を行っていますが、近い将来、製品とは離れて、BenQブランドそのものの施策もできればと考えています。

藤崎:お話の端々に出てくるBenQブランドそのもののファン化ですね。

下平:例えば、掃除機で有名な某メーカーさんの場合、最初は掃除機で有名になりましたが、カテゴリーの違う他の製品も出すようになり、今や「そのメーカーが出す製品だから高いけど良いものなんだろう」というブランドのポジションをつくっています。BenQも、そうしたブランドを目指したいと思っています。

例えば各製品のアンバサダーさんが、自分の関連する製品をお互いに紹介する「アンバサダー交流会」のようなイベントを開催したら相乗効果が得られるのではないか。その結果、BenQブランドが複合的に押し上げられるのではないか、などと考えています。

とはいえ、どの時点で「BenQアンバサダー」といえるような、大きなひと括りにできるかは、まだ見えませんので、あくまで今後の目標です。

BtoBの分野も課題です。今は基本的には一般ユーザーに向けたプロモーションを行っていますが、BenQにはBtoBの製品も多いので、BtoB向けにもアンバサダープログラムを広げられないかと考えています。これは、最初はアンバサダーさんが勤めている会社さんや、その周辺などに向けてかも知れません。いずれにしてもBtoB分野への広がりも課題です。

あとは新しい分野への取り組みも課題です。例えば「eスポーツ」と呼ばれる分野です。

藤崎:海外では「eスポーツ」のプロのゲーマーがいて、集客もすごいそうですね。

下平:eスポーツは北米やヨーロッパで非常に盛んですが、アジアでも韓国やオーストラリアで「eスポーツ」は大人気です。韓国ではオリンピックスタジアムで「eスポーツ大会」が行われ、数万人の席が超満員になるほどの盛り上がりですが、日本ではまだまだそこまでの盛り上がりはありません。ただ今後は、日本も盛り上がると思いますし、弊社としてもそこに協力していきたいと考えています。

次ページ 「大切なのはファンやユーザーの声を聴くこと」へ続く

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藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)
藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

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