世界は日本のクリエイティブを待っている モバイル部門審査レポート — カンヌライオンズ2017レポート

Grand Prix

ゴールドが出そろったあと、たとえ意見が割れた時でも笑いながら審査をしていた僕たちの中に、はじめて沈黙が訪れました。「この中に未来を示している作品はあるのか?」という質問に、即座に明確な答えを出すことができなかったからです。

そして30分ほどの休憩の後、一度はシルバーになっていたところから、ゴールドに引き上げられたTHE FAMILY WAYがグランプリ候補として挙げられました。

プラットフォームをネクストレベルに引き上げたクリエイティビティも素晴らしい。プラットフォームで誰も試してみなかったことに挑戦する勇気も素晴らしい。しかし、プラットフォームが作られた時にはまったく予想もしなかったものを生み出す仕事こそ、社会に未来を描き出す仕事なのではないか。ゆっくりと静かに、そんな共通見解が生まれていきました。

THE FAMILY WAY
プラットフォームがまったく想像もしなかった、精子を撮影するという技術をプロダクトにして販売するというアイデアは非常にクリエイティブですし、まったく想像もしなかった技術を商品化するには、UXへの理解も必要です。高度なコピーライティングやアートディレクションも求められ、クリエイティブ産業が求める全ての技術が高い水準で集結しています。そしてそれをもってして、不妊とジェンダーロールという非常に重要かつ難しい社会問題に果敢に挑戦し、社会にカンバセーションを巻き起こす勇敢さは、全ての産業の未来を明確に指し示しています。

 

Unexpected

僕は日本を発つ前、もし仲良くなった人がいたら、お別れを言う時に何かお土産があるといいなと思って「寿司けしごむ」を買いました。

授賞式の夜、ひとりひとりと感謝の言葉を交わしながらわたしてみたところ、みんな「なんだこのクレイジーな商品は!」と大爆笑。そして審査員の一人の「これってグランプリみたいで、すごく日本的だよね!」という言葉に、はっとさせられました。

デザインクラフトの高い、予想もしなかった技術の使い方。未来を探しに遠くまで来ましたが、未来の芽は出発前からスーツケースのなかに入っていたのでした。

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審査委員長アンディは、授賞式のあと世界中のニュースのトップに「モバイルの予想外なグランプリ!」が取り上げられているのをみて、それはそれは嬉しそうでした。彼の「日本から、またとんでもないアイデアが飛び出してくるのを楽しみにしているよ」という笑顔が忘れられません。

みんなが、日本のクリエイティブが弱点を克服して、世界に新しい風を吹き込んでくれることを待っています。

三浦竜郎
クリエイティブディレクター

博報堂統合プラニング局三浦チーム チームリーダー。03年慶應義塾大学卒、同年博報堂入社。広告で培った力を拡張して、事業の転換点をつくり新たな企業文化へと育っていくクリエイティブを研究・実践している。フィルム、インタラクティブ、データなど幅広い領域で受賞多数。カンヌ金賞、ONE SHOW金賞、ロンドン国際アワード金賞など。17年カンヌ、15年アドフェスト、釜山国際広告祭審査員。最近の仕事に、Eテレの体験するテレビ「オトッペ」、dTV「ふたりをつなぐ物語」、パナソニック「MISHEARD FONT」、McDonald’s「おてごろマック/ニックネームブランディング」「McNOW」など。
キャンプと料理が趣味で、毎年20日ほど仲間と野山で過ごす。デジタル化が進む世界をより良くするヒントは、自然の中にあると信じている。

 

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