若手が参画した都築電気の経営理念づくり~経営と現場をつなぎ、行動を生みだす方法とは?~

グループ12社を抱える専門商社の都築電気(本社・東京都港区)は2016年4月、新たな経営理念を発表した。

理念は、ゼロイン社の協力のもと、未来を担う若手社員で構成された「ブランドプロジェクト」と経営層によって、つくりあげられた。プロジェクトメンバーの一人、人事部の西田憲司氏に、取り組み内容について聞いた。

「ブランドプロジェクト」が始動したのは2015年6月。以前から経営理念の再考は検討されており、同時期に中期経営計画の刷新が決まったことで、並行してのスタートとなった。「若手が考える未来の都築電気」をテーマに、25歳から34歳までの社員22人が、東京本社だけでなく名古屋や大阪、九州といった各地の事業所から推薦され、集められた。

メンバーは毎週3時間、議論を繰り返した。

プロジェクトメンバーが初めて顔を合わせたのは同年8月。その後、4カ月間で17回のワークショップを重ね、企業理念の素案を経営層に提案した。メンバーの一員で人事部の西田憲司氏は「営業、技術、業務などメンバーの職種は様々。最初の会議では現場で起きていることを共有し合ったのですが、一人ひとりが見ている景色がここまで違うのかと驚きました。最初にお互いの視界を共有できたことで、理念に必要な会社の共通項を見出す土壌を築けたのでは」と振り返る。

経営と現場をつなぐ第三者視点

プロジェクトを進める中で最も苦労したのは、拡散した議論の収束と、理念の言語化だったという。プロジェクト開始時に社長から直々に期待の言葉をかけられたこともあり、メンバーの参加意識は非常に高く、定例会議の合間にもメールで意見を送り合うほどだった。

それだけに議論は拡散し、言葉への落とし込みは難航した。さらに、経営層が考える中期経営計画と、プロジェクトで考えた理念の言葉を齟齬がないように“紡ぎ合わせる” 必要もあった。これらのプロセスは、自社だけでは成し得なかったと西田氏は語る。

「現場視点で近視眼的になりがちなところに第三者として問いを投げかけてもらえたこと、言葉を客観的に整理してもらえたことが大きかった。経営陣も若手も、『自分たちの言葉が盛り込まれている』と感じられ、腹落ちする言葉になりました」。

理念の策定から浸透まで、一連のプロジェクトに協力したゼロインは、会議の設計からファシリテーション、議論や言葉への落とし込みまで担当し、若手主体のプロジェクトに伴走した。そのプロセスについて西田氏は「フレームを強制されることはなく、自由に議論ができる環境。自由な発想だからこそ大変な瞬間もありますが、『自分たちで決めることができた』という達成感があります」と振り返る。

浸透も、経営と現場から

新たな経営理念は、2016年1月に社内発表され、同年4月には全社員が集まる社員総会で再び発信された。表彰や映像、社内報など、様々な場やメディアで継続的かつ多面的に経営理念を共有し続けている。

社内報や表彰を通じ、バリューに日常的に触れる。

こうした経営主導での発信と同時に、プロジェクトメンバー自身も、現場において伝道師として活躍している。西田氏の現場は主に新卒採用。プロジェクト参加以降、学生に伝える経営メッセージはそれまで以上に確証と熱を帯びている。以前は、経営陣との距離や言葉の意味を、これほど身近に感じたことはなかったという。学生へのアンケートをもとに集計している「2017年卒IT業界新卒就職人気企業ランキング」(楽天調べ)では「経営者・ビジョンに共感」カテゴリで1位に輝いた。

西田氏の後輩にあたる大塚貴教氏もその熱量を受けとった一人だ。「西田がプロジェクトに参加している半年間、志高く取り組んでいる姿を間近で見てきました。経営理念の言葉だけではなく、先輩方が苦悩しながらつくりあげた、思いや志を含めて、一緒に伝えていきたいです」。

 

次ページ 「理念と仕事の接点をつくる」へ続く

 



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