ファンと1年かけて商品開発、カルビー「それいけ!じゃがり校」10周年

「学校」にしたことで自然とファンマーケティングが実現

藤崎:「じゃがり校」での、具体的な活動内容を教えてください。

松井:通年の活動の軸は大きく2つあります。1つは、ファンの声を商品づくりにつなげるための商品企画開発です。2つめは、深く「じゃがりこ」について知っていただき、より好きになってもらうためのロイヤルユーザーの育成です。

もちろん、サイト開設当時からこのように目的がハッキリしていたわけでなく、手探りでやってきた結果、現在の内容にたどり着きました。

藤崎:人気のコンテンツはありますか?

松井:いろいろありますが当初から変わらず人気なのは「朝礼」です。私たちがブログ形式で、仕事の様子や商品発売などをお知らせし、生徒のみなさんにそれを知っていただき、じゃがりこをより身近に感じていただく活動です。

藤崎:通常の発売告知とは違うのですか?

松井:違います。例えば「テスト販売」といって、一部のコンビニエンスストアや地域に限定して新商品を限定販売することがあります。それを「じゃがり校」の生徒さんに買っていただいて、試食してもらい感想をアンケートに書いていただくということも行っています。

藤崎:生徒さんが、通常のマーケティングでいう「ユーザー調査」をするというわけですか。

松井:そうなんです。そして生徒さんから寄せられたアンケート結果をもとに、企画担当と開発担当が改良を加えていきます。そして、本発売する時にはファンの意見を反映した商品を販売します。近年は、ほぼすべての商品が、このサイクルを経て発売されています。

藤崎:それはすごいですね。広告業界の人は実感があると思いますが、パネル調査やアンケート調査は、とても難しいものです。しかも調査会社に商品調査やアンケートをお願いしても、結局のところ可もなく不可もなくという結果になってしまうことも多いようです。

私が思うに、調査会社に登録者にとって、調査に回答することは、ある種のアルバイトという側面があるのだと思います。彼らは自分たちの意見がマーケティングデータになることを知っていますし、あまり厳しい意見を言うと、次は声を掛けてもらえないこともわかっているので、ほどよい意見に落ち着くのではないでしょうか。

松井:その点では「じゃがり校」の生徒のみなさんは、本当にしっかりと答えてくださります。正直に「パッケージがいまいちです」とか、はっきりと「味がもの足りない」といったことが書かれることもあります。

ときにはこちらがビックリするような辛辣なご意見もいただきますが、全て「じゃがりこ」が好きだからこそのご意見だと、真摯に受け止めて改良に努めています。

次ページ 「ファンの意見を商品改良に生かす」へ続く

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藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)
藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

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