ファンと1年かけて商品開発、カルビー「それいけ!じゃがり校」10周年

ファンの意見を商品改良に生かす

藤崎:生徒さんたちは「じゃがり校」からの情報をもとに、交通費をかけてテスト販売されている地域やお店に行き、お金を出して商品を買って感想を書くんですよね。そのエネルギーがすごいと思います。

松井:みなさん、自分でお金を出して買っていらっしゃることもあり、本当に正直に答えていただけます。その厳しくも温かいご意見には、いつも感謝しています。

例えば2013年の「アボカドチーズ味」のテスト販売の時の反応は印象的でした。売れ行きはとても良かったのですが、生徒のみなさんからの評価は厳しいお声も多かったんです。

その理由を紐解いていくと、アボカドへの「期待感」がすごく高いにも関わらず、「アボカドの風味」が少なすぎたようなんです。「期待したほどアボカドを食べた感じがしない」という意見が多数、寄せられました。

そのため、翌年2014年6月に本発売するまでに、どうしたら「アボカド感」をもっと出せるのか、開発担当と一緒に味の改良を重ねていきました。まずはファンのみなさんに喜んでもらうことが目的ですが、実はファンのみなさんの反応は、市場の反応の縮図と考えることができます。

つまり、テスト販売で売れ行きが良かったのは、味への期待値が高かったからだと考えられますが、食べてみてがっかりされたお客さまはリピート購入していただけません。ということは、本発売の際にそのまま数か月間販売しても、売上が大きく伸びることは難しいかもしれないのです。だから正直に厳しい感想を寄せてくれたファンの方の声は大変貴重です。結果として、お客さまの声を取り入れて本発売した商品は、非常に好調に販売推移しました。本当にありがたい限りです。

藤崎:ファンというのは本当に真面目です。企業や商品にもっと良くなってもらいたいという気持ちが強いからだと思います。考えてみれば、ファンが一番厳しいお客さまなのかも知れませんね。

松井:今までの一般的な調査では寄せられないような、厳しい声やアドバイスをいただけるのが特徴です。しかも、それはファンならではの愛情ゆえのご意見です。それは何物にも変え難い価値があると思います。

藤崎:そうした熱いファンの気持ちにきちんと応えているカルビーさんもすごいと思いました。ファンの声に真面目に向き合うからこそ、ファンからの信頼がさらに深まるのだと思います。

次ページ 「1年かけてみんなで行う商品の共同開発」へ続く

前のページ 次のページ
1 2 3 4 5 6
藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)
藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ