ファンと1年かけて商品開発、カルビー「それいけ!じゃがり校」10周年

1年かけてみんなで行う商品の共同開発

藤崎:最大の学校行事が、商品開発ですね。

松井:はい。毎年「じゃがり校」の生徒のみなさんと、1年間かけて1つの商品をつくりあげる「新商品開発プロジェクト」を行っています。

「商品コンセプト」「味」「パッケージ」「キャッチフレーズ」「プロモーション」など、1年をかけて商品づくりを体験いただいています。

4月に生徒のみなさんからフレーバー案を1000案以上投稿していただき、そこから担当者たちで約40案に絞ります。さらにそこから生徒のみなさんに、ディスカッションと投票を行ってもらい、最終的にはその年に開発する1つのフレーバーを選び出します。

藤崎:味のアイデアは、かなり無茶な要望がきますか(笑)。

松井:私たちの考えも及ばない味の提案も多いですね(笑)。もちろん技術的・コスト的に不可能なものは、残念ながら外すことになりますが、「これに決まるとは」という私たちの予想を超えるフレーバーに決定することがありますので、とても面白いです。

藤崎:フレーバーを考えるプロから見ても「そう来たか」ということがあるんですね。

松井:たいへん興味深いのが、売上との関係です。「じゃがりこ」は、ほぼ毎月新しい味を発売しているのですが、「じゃがり校」でファンとの共同で開発した商品が、新フレーバーの中で年間トップの売上を記録することも多いのです。

それはファンの方々にとって、本当に食べたい味だったということかもしれません。自分たちでつくった商品ということで、みなさんが力を入れて告知してくれたからかもしれません。そうした結果が出たということは、いわゆる共創マーケティングによって、真の意味での消費者ニーズの堀り起こしができているのではないかと考えざるを得ません。

藤崎:カルビーさんが自社で開発した商品を抜いてファンと一緒につくった商品が年間トップになったというのは、失礼ながらプロを抜いたという意味で何だか痛快ですし、たいへん良いお話ですね。

よく「共創の時代」と言われます。でも一般的に消費者の声を聞き過ぎても、結局まとまらない場合が多いようです。その意味で、ファンの方々というのは企業が共創を行うパートナーとして大変良い関係だと私は思っています。ファンの方は無償の愛情がベースですからね。

松井:はい。とても貴重な関係だと日々実感しています。

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藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)
藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

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