ブランドのリスク管理 具体的な対策はこれから
ブランドマネジメントやマーケティングの業務において、いまやWeb・デジタル、およびデータ領域の知識は不可欠だ。しかし、テクノロジーが日々進化を遂げ、それを活用した新たなツール・サービスが次々と登場する同領域については、「情報をキャッチアップしきれない」「キーワード先行で、どんなものか実はよくわかっていない」という声も少なくない。
そこで本調査では、Web広告・デジタルマーケティング領域で近年話題にのぼることが多い用語12点が、ブランドマネージャーの間でどの程度、浸透しているかを聞く設問を設けた。
対象とした用語は次の12点
「ビューアビリティ」
デジタル広告のインプレッションのうち、実際にユーザーが閲覧できる状態にあったインプレッションの比率。
「アドフラウド」
ボット(インターネット上の操作を自動化するプログラム)を利用したり、スパムコンテンツを大量に生成したりするなどして、インプレッション数やクリック数を稼ぎ、デジタル広告の効果を水増しする「広告不正」「広告詐欺」のこと。
「ボット」
インターネット上の操作を自動化するプログラム。
「ブランドセーフティ」
デジタル広告が公序良俗に反するサイト上やコンテンツの近くに掲載されることで、ブランド毀損につながる恐れがある。そのリスクからブランドを守ること。
「3PAS」
3rd Party Ad Serving:複数の配信先メディアに対する広告配信を一括して管理したり、横断的に効果測定を行うことができるアドサーバーのこと。
「DMP」
Data Management Platform:マーケティングに活用できる、あらゆるデータを一元的に管理するためのプラットフォーム。データを蓄積し、分析し、活用先(デジタル広告やLPO、CRMなど)と連携する機能を持つ。
「PMP」
Private Market Place:参加できる広告主・メディアが限定された、プログラマティックな広告取引市場。広告枠の品質や透明性といった、RTBの課題を解決したマーケット。
「リターゲティング広告」「リマーケティング広告」
一度自社サイトを訪れたユーザーを見込み客として捉え、サイト離脱後も再訪問を促すように配信する広告。
「LBM」
Location Based Marketing:ユーザーの位置情報(居住地や現在位置)に合わせて情報を発信するマーケティング手法。ユーザーの居住地域や現在位置に応じて、適切な情報を発信することで、より効果的なマーケティングを可能にしようとするもの。
「アトリビューション」
広告・コミュニケーションにおける各コンテンツ・施策が、コンバージョンにどの程度貢献しているかを測定する手法。
「アドベリフィケーション」
DSPなどを使って配信したデジタル広告の「インビュー(ユーザーに実際に見られる位置に広告が表示されたインプレッション)」を計測する仕組み。ブランド毀損につながる恐れのあるサイトに配信されていないか、ユーザーが認識できる位置に表示されているかなどを確認できる。
それぞれについて、「用語を知っており、かつ実務において何らかの取り組みや対策を行っている」「用語の意味は説明できるが、実務に落とし込まれてはいない」「用語を聞いたことがあるが、意味は説明できない」「用語を知らない」の中から、自身の感覚に最も近いものを選択してもらった。
調査対象のブランドマネージャーの多くが「用語を知っており、かつ実務において何らかの取り組みや対策を行っている」と回答したのは、「リターゲティング広告」(36人)と「リマーケティング広告」(26人)。
一方、「用語を聞いたことがあるが、意味は説明できない」「用語を知らない」と答えた人が多かったのは、「PMP」51人、「3PAS」48人、「LBM」47人、「アドベリフィケーション」43人だった。デジタル広告の精度をより高めるための効果測定や配信先選定には、着手できていない企業も少なくないことが伺える。
また、「用語の意味は説明できるが、実務に落とし込まれてはいない」と回答した人が多かったのは、「ボット」37人、「ブランドセーフティ」29人、「アドフラウド」29人、「ビューアビリティ」25人と、デジタル広告によるブランド価値毀損に関連する用語が中心となった。
デジタル広告の運用業務が自動化する中、知らず知らずのうちにブランドが毀損される恐れがあることが、ブランドマネジメントにおける新たな課題となっている。
ブランド責任者たちの間でそのリスクは認識されているものの、リスク低減のための対策はまだ十分ではなく、具体的な取り組みはこれからという企業が多いことが明らかになった。
【修正履歴】2017/07/07 本文中、「リターゲティング広告」の説明内容に誤りがあったため、修正いたしました。
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