日本は「もったいない」大国か? 食品ロス問題を考える

「売り方」という販促面で工夫できることは多くある

—「食品ロス」の問題について、食品業界の現場の人々は、どのような問題意識を持っているのでしょうか。

食品業界は、大きく「製造業」(メーカー)、スーパーやコンビニエンスストアなど「小売業」、メーカーと小売業を仲介する「卸売業」、「外食産業」という4つのカテゴリーに分けられます。そのなかで「食品ロス」を最も深刻な問題だと認識しているのはメーカーです。その理由は、卸売業や小売業から返品を受けるメーカーは、返品された食品を廃棄するために大きなコストをかけざるを得ない立ち位置にいるからです。

新製品を発売して、想定していた製造計画や販売計画以上に売れなかったとなると、当然ながら返品された食品は廃棄することになります。同じメーカーでも企業によって商品の廃棄に携わる部門はさまざまですが、本誌の読者でもある販促部門の担当者、ブランドマネージャーの方々で、食品廃棄の現実に直面している方は少なくないと思います。

私自身、もともとは食品メーカーのケロッグで広報室長を務めていました。広報と並行して栄養に関する業務や社会貢献事業なども兼務しており、そこで「まだ食べられるが、商品としては販売できないもの」を引き取って福祉施設や困窮者に寄付をする「フードバンク」にも取り組んでいました。その後、会社を辞めて3年間フードバンク側で広報の仕事をしていたのですが、当時もメーカーからの食品の寄付や寄贈が最も多かったですね。

もちろん、卸売業や小売業、外食産業の関係者で、「食品ロス」に対して問題意識を持っている人もたくさんいますし、業界全体での取り組みもあります。その筆頭が、2012年10月に立ち上がり、4年度継続で行なわれた「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」です。

これは農林水産省が音頭をとり、メーカー・卸売業・小売業・外食産業といった枠を超えてフードチェーン全体で解決策を検討する取り組みです。味の素、日清食品、マルハニチロ食品など大手食品メーカー9社、国分、三菱食品など大手食品卸2社、イオンリテール、ファミリーマートなど大手食品小売など4社の計16社が参加していました。

海外では、家庭にある不要な食品の寄付を消費者から受け付け、必要としている施設や団体、困窮世帯に無償で提供する「フードバンク」の取り組みも盛んだ。背景には、店舗と消費者の間で環境などに対する問題意識が共有されていることも大きい。

—では、消費者との接点である店頭においては、どのような取り組みをするべきでしょうか。

海外の事例になりますが、イギリスの大手スーパーでは店内に「買いすぎていませんか?」という主旨のポスターを貼っていることがあります。営利を目的とする企業活動として考えれば、消費者が後に捨ててしまおうが、とにかくたくさん買ってくれればいいわけです。

でも環境問題に対する取り組みが先進的な国ほど、「適度につくり、適度に売り、適度に消費されるべき」という認識が店舗と消費者の間で共有されているので、そうしたポスターを貼ることにより、「当店は自社の都合だけでなく、社会や環境のことも考えている」というアピールになるんです。

……「現場の人々は、どのような問題意識を持っているか」「「売り方」という販促面で工夫できること」「消費者の意識も変えていく必要がある」「店頭においてどのような取り組みをするべきか」など、続きは『販促会議』17年8月号をお読みください。

office 3.11 代表取締役
井出留美氏

食品ロス問題専門家。博士(栄養学)修士(農学)。誕生日で転機となった3・11を冠したoffice3.11設立。セカンドハーベスト・ジャパンをPRアワードグランプリソーシャル・コミュニケーション部門最優秀賞や食品産業もったいない大賞食料産業局長賞へ導いた。Yahoo!ニュース執筆中。

 

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