発想の転換が活躍し続ける 女性人材をつくる
今回のセミナーでは、オグルヴィ・アンド・メイザー 名誉会長のシェリー・ラザラス氏、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表 矢島新子氏、東京急行電鉄 人材戦略室 人事開発部統括部長の小井陽介氏の3名を迎えてのパネルディスカッションが行われた。
日本では、2016年4月に女性活躍推進法が施行。300万人を超える女性の潜在労働力を活かすべく国や多くの企業、組織がその対策に乗り出す。しかし「女性活躍」の言葉が一人歩きをしている側面も否めない。シェリー氏は、「女性活躍の施策は継続が大事。続けてきた結果が今のアメリカをつくっている。日本でも、続けることで未来を拓いていくことが必要だ」と話す。
一方で、「女性は自分に厳しすぎる。何でも完璧であるべきだと思い込んでいる女性は多い」と指摘する。日本では女性に「あなたは将来、管理職になりたいですか?」と調査をすると、通常4割ほどしか肯定的な回答がないという。それは、女性特有の真面目さゆえに、プレッシャーを非常に大きく感じて自分を追いこんでしまうため。
10年以上、産業医として働く人の健康に向き合ってきた矢島氏は、「2012年に初めてストレスを抱える女性が男性を越えた。背景には、男女共に働き方に対する価値観の変化がある。特に女性は何でもできなくてはならないと思いこみ、余計な仕事を抱えこみ、周りからは認めてもらえないと相談にくる方も多い。こうした悩みに対するメンタルヘルスのケアも重要」と指摘する。
また、シェリー氏は「会社が社員と共に成長していくという姿勢がとても大切。『社員は、自分たちの組織に価値があり、会社は社員が成功することを期待している』ことを認識しあうことが重要」と話す。
さらに女性のキャリアの積み重ね方について話が展開する中、幸せにキャリアを重ねるためのポイントに関しそれぞれが見解を示した。矢島氏は、「特に女性は、親や子どもなど他者にキャリアを分断される運命にあると考えた方が現実的。だからこそ、これまでの価値観を少し見直し、長期的な発想はやめた方がいい。2~3年の短い期間で目標を達成することに注力し、積み重ねていくという感覚のほうが、心身の負荷も少なくキャリアをつくることができる」と発想の転換を促した。
小井氏は、若い女性社員と女性の管理職が意識的にコミュニケーションを取るための施策「かがやきwith」を紹介する中で、「若い社員がどんどん質疑応答し、女性管理職には、仕事のみならずプライベートの話、例えば仕事と家庭の両立、結婚観、妊活、離婚に至るまで、どんどん話をしてもらう。それが若い社員にとってはリアルで具体的なロールモデルを描くのに非常に参考になっているようだ」と実際の取り組みから施策成功のポイントに触れた。
シェリー氏は、「成功している人は、自分自身に満足している人。女性はより楽観的に構えることで自分が幸せになり、充実し、情熱をもって社会の一翼を担って周りにも良い影響を与えることができる」とエールを送った。最後に三者は「健康あっての活躍。自分よりも家族や周囲を気にしがちな女性も、自分自身の健康も検診などで守りつつ、将来に少し目を向け、多くの経験を重ね、楽しく成長してもらいたい」と締めくくった。
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