【前回の記事】「SCHOOL OF LOCK!のプロデューサーに聞く!10代が熱狂するラジオ番組を生んだ発想とは?」はこちら
今回も10代向けラジオで絶大な人気を誇るラジオ番組、「SCHOOL OF LOCK!」の生みの親である、TOKYO FMの森田太さんとの対談。
後編では、広告とラジオの可能性について伺いました。
森田太
TOKYO FM執行役員 編成制作局長 兼 グランド・ロック代表取締役社長。
95年にジャパニーズヒップホップ界の伝説的な草分け番組「ヒップホップナイトフライト」を立ち上げた後、「やまだひさしのラジアンリミテッド」をスタート。「福山雅治のSUZUKI TALKING FM」」「MOTHER MUSIC RECORDS」小林武史氏とのコラボレーションによる「ap bank Radio」箭内道彦氏のラジオ「風とロック」等、数々の話題性ある番組の立ち上げに着手。2005年に同局のラジオ番組「SCHOOL OFLOCK!」を総合プロデューサーとして立ち上げる。
SCHOOL OF LOCK!
2005年10月よりTOKYO FMをキーステーションにJFN全国38局で放送されている“ラジオの中の学校”をコンセプトにしているラジオ番組。メインパーソナリティを「校長」・「教頭」、リスナーを「生徒」と呼ぶ。番組のウェブサイトにある「掲示板」は、学校の「教室」と位置づけされ、掲示板での書き込みからリスナーへの電話出演に繋がる仕組み。第3回日本放送文化大賞ラジオ番組部門グランプリ、3回のギャラクシー賞受賞など業界内でも高く評価されている。
【後編】
ターゲティングされた広告がいいとは限らない
椎木:2016年にラジオの広告費が前年より多少ですが増えたというデータがあるんです。
ネット広告の登場以降、テレビや雑誌は影響を受けているのに、ラジオがそうでもないのはどういう理由なんでしょうか。
森田:うーん。もともと少ないからじゃないですか(笑)。冗談です。いや、スティーブ・ジョブズとか、スマートフォンアプリのおかげですかね。ラジオってアプリととっても相性がいいと思うし、きっともっとよくなるよ。
ラジオってオンエア中って言います。目に見えないし空気の中にいるから、いろんなところに寄り添える。大統領の部屋にも行けるし、好きな子の耳元にも行ける。ラジオが実は人間と一番相性のいいメディアだから、それがネット広告の影響をあまり受けない理由ですかね。
椎木:今SNS上では、インフルエンサーにお金払ってPRしてもらうのが流行ってるんです。でもそれが変にバズっちゃって、「#PR」ってつけないとポストしちゃいけないようになっちゃったんですよ。今の10代ってステマを見破るのが早いし、広告に若干嫌悪感があるんですよね。
森田:前から思っていたんだけど、広告って嫌われてる感があってかわいそうだよね。特にネット広告が出てきた途端、それが顕著になったと感じてます。未熟な人類がデジタルを使いこなせないうちにどんどんデジタル化していったから、システムと意思疎通ができなくて結局バグが起きてる。広告ブロッカーのアプリがすごい数ダウンロードされて、ネット広告にとって悩ましいよね。海外のセレブがステマ広告で問題になっているニュースを見ましたが、あのやり方はもう限界だし、ま、過渡期ですよね。
実は数年間、あえて地上波テレビを見ない時期をつくっていましたが、最近解禁してまた見始めました。そしたらオムツのCMが流れてきて、「あ、友達の子どもが生まれたからオムツを贈ってあげよう」と思いました。ネット広告ってターゲティングされているから、子どものいない僕のネット上にはオムツの広告は絶対入ってこない。でも地上波テレビだから、今まで起きなかった「バグ」が入ってきた。プリミティブなメディアって人間ぽくて、実は最先端かなと思ってます、最近。
椎木:わかります。ターゲティングされた広告って自分の興味のあるものだから気持ちいいし、違和感がないし、最近までネットの世界がいいなって思ってたんです。でも、ついこの間お話した方も「テレビがめっちゃ好き」って言ってて。テレビは自分の全くいらない情報をくれるから新しい発見をもたらしてくれるし、違和感こそがいろんなことを考えさせてくれるって。そう言えば、テレビCMに嫌悪感を抱いたことってあんまりないかもな〜。森田さんはラジオ業界にいらっしゃって、これからのラジオ広告について考えていることはありますか。
森田:カッコイイCMづくりかな。ミュージシャンやサウンドクリエイターと手を組んで、音楽的でカッコいいラジオCMを作っていくムーブメントを起こす。そんな未来をつくりたいと今企んでます。