鈴木慶太朗
SHIFTBRAIN Inc.
Design Director / Branch Manager / Designer
1984年生まれ。東京出身、2児の父。立教大学経済学部卒。大学在学時にグラフィックデザインを学ぶ。制作会社数社を経て、現在はシフトブレインでデザインディレクターとして勤務し、オランダ支店のマネージャー。ブランドディレクションからのビジュアルコミュニケーション設計をベースに、クロスメディアプラットフォームに対応したデザインディレクション、デザイン、UXやUIの設計を行っている。世界的なWebデザインアワード、Awwwards審査メンバーを2013年から務めている。
デジタルクリエイティブの今を知る
こんにちは、シフトブレインの鈴木です。6/1~6/3にイタリアのミラノで開催されたイベント、Digital Design Days + OFFF2017(以下、DDD2017)に参加してきました。去年に続き、今年で2回目となるこのDDDは、52カ国から約1700人の参加者が訪れ、非常に国際的なイベントに成長してきています。
イベントでは英語・イタリア語で行われるトークとワークショップ、インスタレーションの展示やネットワーキングパーティなどが行われていました。国際的なデジタルデザインのイベントとしては、スペインのOFFFとベルギーのKIKKが有名ですが、DDDはOFFFと提携してイタリアを中心としたデジタルクリエイティブの活性化に取り組んでいます。
今回、イタリアを中心とするDDDに参加したのは、トークのラインナップが充実していた点が個人的には大きな動機です。イタリアのイベントだからといって、イタリアのクリエイティブに偏ることなく、国際色豊かな視点でイタリアのクリエイティブを盛り上げていこうという雰囲気が、会場からも感じられたのが印象的でした。
そんなラインナップの中から、数名のスピーカーをピックアップして、今のデジタルクリエイティブについて考察してみたいと思います。
マシンラーニングをデザインするGoogle
今回のイベントでも注目していたスピーカーの1人として、Google Design&ResearchのHead Designer、ANDY DAHLEYがいます。
彼はインダストリアルデザインを学んだ後、MITメディアラボで石井裕教授が担当するタンジブルメディアグループに所属し、HPやPhilipsなどでもリードデザイナーとしての経験があります。現在は、GoogleでマシンラーニングとAIについて、デザインイノベーションからのアプローチを行っています。
スピーチの中では、Web上に存在する手書きや印刷されたドキュメント(いわゆるデバイステキストとして認識できない)を検索するために行っている、文字のマシンラーニングについての研究と実践、それを行うためのチームビルディングなどについて解説していました。手書きや印刷された文字をデジタルに変換する技術としては、すでにOCR(光学文字認識)が存在していますが、マシンラーニングによってさらに精度を上げていき、Web上にアップロードされたすべての文字を検索することがGoogle Searchの次のステップのようです。
マシンラーニングやAIについては、近年、製造業やデジタルサービスのトレンドになっていますが、GoogleのマシンラーニングやAIへのアプローチは興味深いものがあります。というのも、そもそもマシンラーニングについて、それを実際に使える形に落とし込んでいくことをデザインの役割として認識している部分が他とは違う気がしています。
マシンラーニングやAIと聞くと、とても高度な専門知識が必要で開発者の領域であると考えられがちなため、一般的にマシンラーニングやAIを導入するとなると、それ自体に何ができるのか、という部分から思考が開始されることが多く、新しい発想に結びつきにくいと感じます(自分も過去にそういう経験が少なからずあります)。
それに対して、Googleにおけるデザインは、こういった技術スタートで機能に頼りがちな思考を防ぎ、よりアウトプット主体で進めていくことを促進して、技術をさらに拡張していく役割があるように思います。Googleの成長は「まず理想があり、それに合わせて技術を使っていく」というスタイルが作り出しているのかもしれないですね。
デジタルにおけるサービス系のデザインは、概してアクセス解析などで得たユーザーやマーケティングデータに左右されるため、ただインターフェースをデザインするだけではなく、データ解析をする力も必要とされています。しかし、このデータ解析からデザインへの落とし込みが、マシンラーニングやAIで代替されるようになる将来がきたとき、デザイナーはマシンラーニングやAIを使いこなす知識が必要になってくるかもしれません。