世界のトップ級デジタルプロダクションがミラノに集結~DDD参加レポート

多様化、拡張、専門化するデジタルクリエイティブ

今回のDDD2017のスピーカーの多くは、デジタルという場所で表現を作ることに特化したスタジオやプロダクションが参加しています。その中のいくつかは他のカンファレンスやプロジェクトを通してお互いに知り合いだったりすることもあり、トークプログラムよりネットワーキングプログラムの方が濃密だったりするのですが、前提としてデジタルクリエイティブは多様化し、拡張し、専門化していて、どのプロダクションも世界共通でその認識をもっているように感じます(多様化・拡張・専門化は国内プロダクションでもすでに起きていますね)。

世界的に活躍するプロダクションの場合、クライアントも競合も世界規模なので、自分たちがどこに特化しているのか、それに伴ったプロジェクトの実績があるのかどうか、ということが常に求められているように思います。そのため、スピーチの内容は多岐に渡り、各プロダクションそれぞれの特色が出ていました。

 

プロジェクトマネージメントの進化- Epic Agency

Epic Agencyのスピーチは、(個人的に聞くのは確か2回目なのですが)他のプロダクションが実績紹介的なトークが多い中で、自分たちがどのようにチームビルディングしていて、どのようにクライアントとプロジェクトを進めていくのか、またどうしてそのような形になっていったのか、ということをわかりやすくまとめてくれていました。

デジタル業界では、2,3年くらい前からクライアントとダイレクトに付き合うプロダクションが多くなっていて、そのときからプロジェクトをどのようにうまく進めていくか、というのは1つの大きなトピックスでした。2年くらい前は「Education」というワードがよく出てきていたんですが、最近は「Workshop」「Agile」「Prototype」などのワードに代表されるようにロングスパンでクライアントといっしょに進めていくスタイルが多くなっているような印象です。

個人的にも、こういったクライアントとロングスパンで進める進行も増えてきているように感じますが、日本ではマネタイズの面で簡単には導入しづらいシステムかなという印象があります。

 

サイト制作からデジタルプロモーション戦略へ —WatsonDG

クライアントとの強いつながりとしては、WatsonDGが1つの例になると思います。WatsonDGはアメリカのLAを拠点にしていて、特に映画のプロモーションサイトが多く、クオリティの高いものを出し続けている世界でもトップレベルのクリエイティブを持っているプロダクションです。

CEOのフェルナンドが、以前CommunicationArtsのインタビューで、WatsonDGの仕事に映画のプロモーションサイトが多いのは、フェルナンドの友達が飛行機の中で偶然パラマウントの代表と席が隣で名刺交換し、そこからピッチに招待されたことがきっかけだと話していました。まさにアメリカンドリームだなと思っていたんですが、そこから映画のプロモーションサイトを制作するようになり、今ではさらにそこを専門化させて、SNSを含むデジタルプロモーション戦略までを手がけるようになっています。

スピーチの中でもSNSを意識したプロモーション設計、デザインなどが話されていました。特に映画「Ex-machina」のプロモーションで、SXSWで行われたTinderを使ったプロモーション(出会い系アプリで美女が話しかけてくるのだが、実はそれは映画のプロモーションだったという落ち)は有名ですね。

次ページ 「デザインとテクノロジーを統合した表現方法の模索」へ続く

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