経営者こそがブランドマネージャーになるべき(後篇)――横浜DeNAベイスターズ前社長 池田純

史上最年少で横浜DeNAベイスターズの社長に就任後、5年間で売上倍増、観客動員数は球団史上最多、24億円の赤字から約10億円の黒字化を達成させた同社前社長の池田 純氏による「スポーツ業界に学ぶマーケティングの発想法」コラム。第4回は池田氏のこれまでの経験をもとに、経営者(ブランドマネージャー)のあり方について紹介する。
(前篇はこちら

マーケティングでは現場レベルの担当者から働きかけ、部署間の“壁”を越えていく必要がある。
版権: artjazz / 123RF 写真素材

経営とはすなわちマーケティング

経営者にとって、マーケティングを経験していることは強みになります。私自身、博報堂時代や企業のコンサルティングをしていた時の経験すべてが糧となっています。たとえば博報堂時代に身をもって学んだことの一つに、前編でも少し触れましたが、どんなに良い広告をつくってもモノや人が動かなければ意味がないということがあります。

そもそも「良い広告」とは何かを定義するのは難しいかもしれませんが、少なくとも「広告」はモノを売るための仕組みをつくるマーケティング活動のひとつであることは間違いありません。

私が考えるマーケティングの対象には、広告のほかに商品やWebサイトなど、企業が対外的に露出、コミュニケーションしているものは全て含まれます。商品企画部がどんなに質の高いものつくっても、そこにマーケティングの視点がなければ売れません。その逆に、マーケティングの視点があっても、それを形にする商品企画部の力も不可欠です。マーケティングは、本物の顧客主義からはじまります。

これまでも述べてきたとおり、お客さんの価格に対する価値観をいい意味で麻痺させるためには、あらゆるコンテンツ、商品、コミュニケーションを最高レベルでつくりあげなければいけないのです。つまり、ヒット商品を生み出したり、イベントを満員にしたりするためには、ひとつの部署だけの力では成しえない。全社を横串に刺し、組織全体を司ることが求められるのです。それができるのはブランドマネージャーであり、一番できるのは社長です。要するに、「経営=マーケティング」とも言えるのです。

ただ国内を見渡すと、社長がその役割を担っている企業は決して多くありません。そのため多くの企業では、現場レベルの担当者から働きかけていく必要があります。大手企業ほど分業で、部署間の“壁”があるかもしれませんが、当然ながら摩擦を起こしながら、周りを巻き込まなければならないのです。別に横並びで、部長がいたって、究極的には、会社として全体最適で売上が上がればいいので、それなら、マーケティングの部署がリードをして、商品企画の人から信頼を得たり、広報の部署から広告の部署から信頼を得たりして、全体を司るリーダーになっていけば、それは会社が見ているし、その人が自ずとリーダーに、ポジションともになっていく可能性もあります。

頭のなかで「私の仕事はここだ」って、勝手に割り切ってはいけません。それは私の仕事じゃありません!っていうのは、お客さんから見たらそんなものはどうでもいいことです。スポーツビジネスも同じで、たとえば「横浜スタジアム」と「横浜DeNAベイスターズ」というものが別で、スタジアムとベイスターズというチームが別経営になっていると、スタジアムがいいものじゃなかったり、ご飯がおいしくなかったりしたとします。でもそれはお客さんには関係ないわけで、クレームは全部ベイスターズにきます。

お客さんから見たらひとつの商品であり、ひとつの企業でしかありません。そのなかの人のしがらみとか、人間関係とか役割分担とか責任領域とか、関係ないんです。

次回はマーケッターのキャリア戦略についてお話します。

池田 純 氏

1976年1月23日、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業後、住友商事、博報堂を経て、2007年にDeNAに入社。執行役員マーケティングコミュニケーション室長を務める。2010年にNTTドコモとDeNAのジョイントベンチャー、エブリスタの初代社長として事業を立ち上げ、初年度から黒字化。2011年に横浜DeNAベイスターズの社長に史上最年少の35歳で就任。5年間で数々の改革を行ない、売上は倍増、観客動員数は球団史上最多、24億円の赤字から約10億円の黒字化に成功。2016年10月16日、契約満了に伴い、横浜DeNAベイスターズ社長を退任。現在はJリーグ特任理事、明治大学学長特任補佐や複数の企業のアドバイザーを務める一方、Number Sports Business College(NSBC)を開講するなど、10以上の肩書を持つ実業家として活躍している。著書に『空気のつくり方』(幻冬舎)、『スポーツビジネスの教科書 常識の超え方 35歳球団社長の経営メソッド』(文藝春秋)ほか。
HP→http://plus-j.jp/

池田純
池田純

1976年1月23日、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業後、住友商事、博報堂を経て、2007年にDeNAに入社。執行役員マーケティングコミュニケーション室長を務める。2010年にNTTドコモとDeNAのジョイントベンチャー、エブリスタの初代社長として事業を立ち上げ、初年度から黒字化。2011年に横浜DeNAベイスターズの社長に史上最年少の35歳で就任。5年間で数々の改革を行ない、売上は倍増、観客動員数は球団史上最多、24億円の赤字から約10億円の黒字化に成功。2016年10月16日、契約満了に伴い、横浜DeNAベイスターズ社長を退任。現在はJリーグ特任理事、明治大学学長特任補佐や複数の企業のアドバイザーを務める一方、Number Sports Business College(NSBC)を開講するなど、10以上の肩書を持つ実業家として活躍している。著書に『空気のつくり方』(幻冬舎)、『スポーツビジネスの教科書 常識の超え方 35歳球団社長の経営メソッド』(文藝春秋)ほか。
HP→http://plus-j.jp/

池田純

1976年1月23日、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業後、住友商事、博報堂を経て、2007年にDeNAに入社。執行役員マーケティングコミュニケーション室長を務める。2010年にNTTドコモとDeNAのジョイントベンチャー、エブリスタの初代社長として事業を立ち上げ、初年度から黒字化。2011年に横浜DeNAベイスターズの社長に史上最年少の35歳で就任。5年間で数々の改革を行ない、売上は倍増、観客動員数は球団史上最多、24億円の赤字から約10億円の黒字化に成功。2016年10月16日、契約満了に伴い、横浜DeNAベイスターズ社長を退任。現在はJリーグ特任理事、明治大学学長特任補佐や複数の企業のアドバイザーを務める一方、Number Sports Business College(NSBC)を開講するなど、10以上の肩書を持つ実業家として活躍している。著書に『空気のつくり方』(幻冬舎)、『スポーツビジネスの教科書 常識の超え方 35歳球団社長の経営メソッド』(文藝春秋)ほか。
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