松田紀子(まつだ・のりこ)
KADOKAWA『レタスクラブ』編集長。長崎県出身。大学卒業後リクルート九州にて『じゃらん九州発』の編集に3年間携わる。その後、メディアファクトリーにてコミックエッセイを立ちあげ、『ダーリンは外国人』などのミリオンを創出。2013年コミックエッセイ編集部編集長就任。KADOKAWA合併後の2016年6月より、コミックエッセイ・レタスクラブ編集課 編集長就任。書籍と雑誌両方の編集長を務める。
ムードから変える。編集部改革のための10の取り組み
『レタスクラブ』は今年創刊30周年を迎える。夕飯の献立やお掃除の方法、整理収納の技、節約法などを紹介する老舗主婦雑誌だ。
1年前、私が編集長に就任したときは月2回発行の隔週誌で、正直売行きは芳しくなかった。編集長就任にあたり、会社から与えられたミッションは、「コミックエッセイを取り入れながら、『レタスクラブ』の誌面刷新を図ること」だった。これまでのコミックエッセイのコンテンツや経験を生かして、レタスクラブの部数を伸ばすことが求められていた。
レタスクラブの誌面改革は、大きく2段階で行っている。6月に編集長に就任し、マイナーなリニューアルを重ねながら、周年号となる11月売り号のタイミングで連載を大幅に見直した。コミックエッセイを数本新たに投入し、連載を改訂。その後翌年春に月刊化するタイミングで構成・特集、そしてデザイナーも変え、大きくリニューアルを果たしている。
その結果、おかげさまで、3月25日発売号のプレ月刊化号から3号連続で完売する快挙を達成。特にコンビニでの売上げは号を追うごとに増えている。出版業界が直面している「紙媒体はウェブに押され劣勢」、という状況に一筋の光を照らす事例ではないだろうか。
これからお話しする10の取り組みは、私がその過程で何をしてきたのかを、自分の視点でふりかえってまとめたものだ。
編集長に就任してまず感じたのは、ムードの停滞だった。『レタスクラブ』の編集部員は、ベテラン10年選手が多い。中には入社以来レタスクラブ一筋という編集部員もいて、よく言えば真面目なのだが、外から来た人間の目線で見ると、守りに入りすぎていると感じた。「レタスクラブはこうあるべき」という、作り守り上げてきたイメージにこだわりが強い。編集会議でも持ち寄った案を各自が発表するだけで、自分から率先して発言する姿があまり見られない。それはそれは、おとなしい状態だった。
これでは到底イキのいい雑誌は作れないと感じ、まず取り組んだのが、編集部の改革だ。
編集コンテンツの改革というよりも、組織再生のような話かもしれないが、いま紙のメディア作りに携わっている人たちに、少しでも参考になればと思う。