ブレーンねほはほナイト「スタートアップ×広告を語りつくす一夜!」開催レポート

7月7日、『ブレーン』7月号「新しい広告主による新しい広告の使い方」に登場した3者が出演する特集連動トークイベント「ブレーンねほはほナイト」が開催された。スピーカーは、メルカリの鋤柄直哉さん、グッドルームの小倉弘之さん、グロービス・キャピタル・パートナーズの東明宏さん。モデレーターは、GOinc.の三浦崇宏さんが務めた。スタートアップの経営者、マーケティング担当者、ベンチャーキャピタル–それぞれの立場から広告に対する率直な思いが語られた。

広告会社って「怪しい」ですか?

三浦崇宏(みうら・たかひろ)
GO inc. PR /クリエイティブディレクター

三浦:今日は広告業界やPR業界の方々が多くいらっしゃっています。スタートアップと一緒に仕事をしてみたいと考えている方も多いのではないでしょうか。皆さんに代わって、僕から突っ込んだ質問をしていきます。最初に、この言葉を紹介させてください。「広告費は、あなたがつまらないサービスをつくってしまったことに対する罰金だ」。2010年に僕が初めて行ったカンヌライオンズで聞いたFacebookのマーク・ザッカーバーグの言葉です。みなさんはこの言葉についてどう思いますか?

鋤柄:この言葉通りだとすると、メルカリは相当の罰金を払っていることになりますね(笑)。ただ、広告費をかけることで、成長のスピードは速まると僕たちは考えています。スタートアップがいいサービスをつくっても、成長が遅ければ、後から大手が参入して市場を奪われるかもしれません。それを防ぐために、プロモーションでサービスの成長スピードを早め、シェアを獲得することは必要です。

東 明宏(ひがし・あきひろ)
グロービス・キャピタル・パートナーズ

東:いいサービスであっても自然に広がるのは難しいフェーズがあります。外部環境も関係するので、適切なタイミングで広告費を投資するのは大切なことだと思います。

小倉:グッドルームは最初に広告費を払ったのがFacebookでしたが(笑)、広告を始めたばかりの時、広告予算を一桁間違えて多く出稿してしまったことがあるんです。

三浦:一桁!それは大変ですね。

小倉:はい(笑)。ただ、それがきっかけで一気にユーザーを増やす結果にもなりました。サービスを加速させる上で、広告は大事だと考えています。

三浦:ここ4~5年でスタートアップに対する投資が盛んになり、「よいアイデアが知られないまま潰れてしまう」ということは減ったんじゃないかと思います。広告は積極的に使うべきと僕も思っています。ところで皆さんは、広告会社やPR会社にどんなイメージを持っていますか?GOも「一体何を価値提供してくれるのか?」とクライアントによく聞かれるんです。何をする会社なのかよくわからない、身なりも怪しい、専門用語が多すぎる…など色々言われます(笑)。最初はどんな印象でしたか?

鋤柄直哉(すきがら・なおや)
メルカリ シニアマーケティングスペシャリスト

鋤柄:提示された金額が本当に適切なのか、判断しづらいと感じましたね。

三浦:「広告はブラックボックス」だと、ブレーンの取材で答えていましたよね。

鋤柄:デジタル広告は効果測定も明確だしPDCAも回しやすい。でもテレビCMを始めることになって、そもそも何の数字を見て、何を目標にすればいいのかの設定が難しかったんです。あとは視聴率。「視聴率に対するコスト」みたいな話をされるのですが、視聴率と言っても、時間帯や番組によって1%の価値は違うだろうと。

三浦:質が全然違うであろうにも関わらず、視聴率という魔法の言葉で値段を決めてくるということですね。グッドルームは「同棲解消ホケン」のPRで話題になりましたが、小倉さんが広告会社や外部のPRの専門家に対して期待することは何ですか?

小倉:今はまだPRの経験が少ないので、実施のサポートだけでなく企画から一緒に考えてくれる人と仕事がしたいですね。ただ今は「どこのPR会社がよいか」からわからないので、そこが悩みどころです。

東:何億円も広告費を調達できるベンチャーよりも、お金のないベンチャーのほうが圧倒的に多いですから、媒体費など大きな投資が必要ないPRには、投資する立場からもとても期待しています。ただ、スタートアップ業界全体を見渡してもPR経験者が非常に少ないので、小倉さんの言うように並走してくれる人は貴重な存在ですね。

三浦:次の質問です。ブランディングについてはどのように考えていますか?

小倉弘之(おぐら・ひろゆき)
グッドルーム 代表取締役社長

小倉:グッドルームではブランディングを一番大事に考えています。会社が何のためにあるのか考えると、世の中を良くするためであり、お客さまに価値を感じてもらいたいからです。そこを真剣に考えなければ10年、20年と続けていくことはできません。こだわりの賃貸物件を紹介する弊社のようなサイトが、価格競争に巻き込まれずに高いお部屋の仲介ができたり、共感してくれる仲間が採用で集まってくれるのも、ブランディングによるところが大きいです。

東:スタートアップは定量化やKPI化は“得意科目”ですが、ブランディングは“不得意科目”です。最初は得意な定量化の問題を解いていればいいけれど、どうやらその先にブランディングという応用問題があると、現場よりも社長が先に気づくんですよね。でも、現場に話しても応用問題がなかなか解けない。だから外のプロに聞くという構図があるんじゃないでしょうか。

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