【前回記事】「「パナソニック宣伝100年の軌跡」(4)日常をドラマチックに切り取る — 家事の広告篇」はこちら
2018年に創業100周年を迎える、パナソニック流の宣伝に迫る対談。第5回は「美容・健康の広告篇」です。ヘアーケアやフェイスケア、フィットネス機器といった美容・健康家電の数々。その広告では、商品の機能だけでなく見る人を引き込む“美しさ”も表現してきました。今回は「きれいなおねえさんは、好きですか。」シリーズで初代モデルを務めた女優・水野真紀さんと、同シリーズを担当したプロデューサー・齊藤洋久さんの対談です。
「きれいなおねえさん」の裏側にあるメディア戦略
—「きれいなおねえさんは、好きですか。」のキャッチフレーズを使った広告は、15年以上続き、当時の認知率は9割を超えました(※)。初代「きれいなおねえさん」を務めた水野さんご出演のCMは、どのように生まれたのでしょうか。
※キャンペーン開始翌年の1993年から2005年まで毎年パナソニックが実施したキャッチフレーズ認知率調査より
齊藤:パナソニックの宣伝担当の方が来社され「化粧品のようなCMをつくってほしい」と頼まれました。おしゃれに電化製品を表現してほしい、と。ですから商品説明はわずかで、後は水野さん扮するおねえさんの日常を映したCMをつくりました。
水野:弟がいる設定で、部屋でくつろぎながら、顔そりをしたり脱毛器を使ったりするシーンを撮影しましたね。部屋のセットもおしゃれで作り込まれていました。
齊藤:美容商品は6つあって、それまで商品ごとに広告を制作していたのですが、どれも女性がきれいになるための商品ですから「まとめて同じコンセプトで宣伝しましょう」と提案しました。1商品だとCMの露出量も限られますが、まとめて宣伝すれば、十分に目立ちます。
水野:横串を通したコピーが「きれいなおねえさんは、好きですか。」だったのですね。
齊藤:商品名を覚えられなくても、店頭で「きれいなおねえさん」の商品と言ってもらえば、買ってもらえると思いました。
水野:どうしてパナソニックさんは私を選んでくださったのか、といまだに思います。
齊藤:「きれいなおねえさん」には「もしかしたら、ウチの隣にいるかもしれない」と思わせるリアリティーが欲しかったんです。当時の水野さんは、まだ売れっ子というわけではなくピュア。CMとともに人気が出て成長して、世の中の人が「ますますきれいになってきたね」と思えば、「きれいなおねえさん」とパナソニック、そして水野さんを結ぶ図式がしっかりできます。
こうしたことは多少計算していましたが、水野さんのご活躍は想定以上。「きれいなおねえさん」はすっかり水野さんの肩書になりましたね。
水野:ありがたいことに今でも言われることがあります。