デジタルシフト相談室「デジタル系エージェンシーの皆さんのお悩みに答えます」編

さて、お次の方、まいりましょう。おっと、強気の質問が来ましたね。

Q:マス広告ってもうなくなるんじゃないですか?

 

小霜:デジタル系エージェンシーには「Web万能論」の人多いですよね。やはり企業として若いし、売上げも伸びてるからそういう印象を持ってしまうんでしょう。でも少なくとも現時点では間違っていると断言できます。

G社(あの会社です、あの)が大手広告主に直接アプローチしてデジタルシフトを促していたりして、広告主は「そんなに効率いいならやってみようか」モードに入っていますが、「全然成果出ないじゃないか」と幻滅するところも出てきてます。Webだけだとまだ限界があるんですよ。来年あたりはマスへの揺れ戻しが起きそうな気がします。だから僕はマス「or」Web発想じゃなくて、マス「and」Webの統合発想じゃないとうまくいかないよと唱えているんです。

Q:デジタル系エージェンシーがマス領域に進出するのは、一線を越えることになりますか?

 

小霜:総合系もデジタル領域を略奪しようとしてますから、まあそのあたりはお互い様かと。ただ思うに、デジタル系エージェンシーの最大の弱点は総合系の出身者が少ないことでしょう。

マス広告は宣伝部・マーケ部との間合いというか、信頼関係の作り方が重要なのですが、デジタル系の人たちはそこが感覚的にピンと来ないんですよね。広告主は1年という単位で活動するので総合系はそこに合わせて動きますが、デジタル系は短期で収益を見ますからそこもうまくシンクロできなかったり。

今、新鮮なアイデアを期待して総合系のコンペにデジタル系を呼ぶケースが時々ありますが、デジタル系が勝ったという話を自分は聞きません。マス領域をやるなら「数値」だけでなく「人」を読むスキルが必須と知っておいてください。

Q:AIがだんだん運用に導入され始めていますが、自分の仕事がなくなるのではと不安です。

 

小霜:そんなに不安になることはないのでは。歴史的に見ると機械化が進むと就業率は下がることなく上がるんです。それは機械化に隣接した仕事が新たに生まれるからと考えられています。

本にも書きましたが、効果と成果は違います。AIが自動的にメディア出稿のアロケーションをし始めてKPIを最大化したとしても、それは商品が売れたとか、資料請求が来たとかの成果に直ちに結びつくわけではありません。AIが出す効果をどう成果につなげるかという職種が生まれるんじゃないかと僕は予測していて、そこまで行って始めて本当のデジタル広告の始まりだと思うのです。

デジタル系も、総合系も、お互いに一線を越えようとしていると。くれぐれも、人生の大事な一線は踏み越えないようにご注意ください。

AIの質問は、「働き方」のお話ですね。「新たな職業を生み出すことも(AIにできない)人間の仕事の1つ」と話していた方がいましたが、AIを使ってどう人間の仕事の成果を最大化するかを考えていかないといけないのだなと思いました。

Q:デジタル系の仕事をしてますが、小霜さんの新著を読んで初めてデジタル広告のこれまでを知りました。自分的にはそこが役に立つように感じています。

 

小霜:そういう声も多くいただいています。過去の流れを知ることは、将来の予測に役立ちますから。本にも書きましたが動画からリタゲ、LPへ誘導といった設計は通過点に過ぎず、デジタルコミュニケーションの次のステージがもう見え始めています。

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小霜和也(小霜オフィス/no problem LLC. 代表)
小霜和也(小霜オフィス/no problem LLC. 代表)

Creative Director/ Copywriter/ Creative Consultant
1962年兵庫県西宮市生まれ。1986 年東京大学法学部卒業。
同年博報堂入社、コピーライター配属。1998 年退社。
2017年現在、株式会社小霜オフィス no problem LLC. 代表。7月に最新著書『急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。』(宣伝会議刊)を発売。他、著書に『ここらで広告コピーの本当の話をします。』(宣伝会議刊)

小霜和也(小霜オフィス/no problem LLC. 代表)

Creative Director/ Copywriter/ Creative Consultant
1962年兵庫県西宮市生まれ。1986 年東京大学法学部卒業。
同年博報堂入社、コピーライター配属。1998 年退社。
2017年現在、株式会社小霜オフィス no problem LLC. 代表。7月に最新著書『急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。』(宣伝会議刊)を発売。他、著書に『ここらで広告コピーの本当の話をします。』(宣伝会議刊)

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