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一回目のコラムでは、世界最大級のクリエイティブフェス「カンヌライオンズ2014」にてグランプリ・フォー・グッド部門を受賞した「Sweetie」という事例にあらためてフォーカスを当てながら、その本質と、現代社会における応用性について考察していきたいと思います。
<Chapter.1>事例のポイントを考察する
児童買春犯を1000人以上特定した「Sweetie」が示す可能性
「Sweetie」とは、見出しにもある通り、児童買春の犯人を1000人以上特定するに至った施策。
実施したのは、児童買春撲滅を訴えるオランダの団体「Terre des Hommes」です。
驚くべきその手法とは、児童買春が行われているビデオチャットルームに“フィリピンに住む10歳の女の子”と称して、本当の人間と見間違うほどの高精細なCGでつくられた女の子「Sweetie」を登場させるというもの。
CGの女の子をつかったおとり捜査を実施する、という前代未聞の取り組みを行ったところ、2万人以上の児童性愛者が本当の女の子と見間違え、接触に成功したといいます。
この取り組みが大きな話題となったことで、国際刑事警察機構を動かすことにつながり、結果1000人以上の児童買春犯罪者の特定に至ったそうです。
さて、そんな素晴らしい施策「Sweetie」ですが、ここで着目したいのは、そのアウトプットを導くに至った考えのプロセス。
もちろん、CG技術を駆使して本当に施策を実現したことも素晴らしいのですが、その少し手前に、このアイデアを秀逸たらしめたポイントがあるように思います。
そもそも、ネットを介した児童買春犯罪を取り締まるのが難しいのは、多くの違法ネット取引がそうであるように、何台もサーバーをクラッキングしてアクセスするなど“足がつかない”ように細工されてしまうためという側面があります。
ゆえに、犯人を直接探し当てるというアプローチは非常に困難でした。
で、あれば。
児童性愛者の方から接触したくなるような“何か”を仕掛けて、彼らが集まったところを一網打尽にできないか──?
つまり、
犯罪者を「探す」が難しいのであれば、「おびき寄せる」ことはできないか?
という発想に行き着けたかどうかが、一番のポイントのように思います。
そして、この考え方、よくよく考えてみると、私たちがよく知っているものにも活かされています。
そう、この記事のタイトルにも登場している「ねずみ捕り」です。