無意識のニーズ現れるデータ
まずは手軽なところから活用を
「高齢化と人口の減少、市場が小さくなることが予想されている。既存の小売市場は30年後には半減するとも言われる。
小売は販売力で、メーカーは商品力で、と役割分担を明確にし、時代の変化に対応しなければ生き残れない」──。
トライアルホールディングスの西川晋二・取締役副会長は、第一部でこう切り出した。小売とメーカーの相乗効果を高めるものこそ「データだ」と指摘する。
傘下の事業会社トライアルカンパニーは今年3月時点でディスカウントストアを全国に199店鋪持つ。売上高は約3612億円。ID-POS データは07年から10年分、のべ100億件という規模で蓄積している。アクティブ会員は約500万人。
こうしたID-POSデータを、トライアルカンパニーは「MD-LINK」と名づけた自社システムを通じてメーカーに提供している。契約企業は230社。
「商品の年平均の購買頻度や購買人数などもメーカーと一緒に見ています。(データから)課題を見つけ、改善することが、売り上げを伸ばす第一歩」(西川氏)とは言え、メーカー側に十分な情報が提供されることは多くない。そこで、すでに蓄積されたID-POSデータを活用したいが、ツール導入や分析が大変では…という懸念もあるのではないか。
そこで第二部は、True Dataの船越万史氏が、ID-POS データ分析サービス「ドルフィンアイ」の実演を交え、活用法を紹介した。
「ドルフィンアイ」は、スーパーやドラッグストアにおける全国約5000万人の消費者購買情報を元に、全500カテゴリーの商品の売れ行きを可視化するサービスだ。
条件を入力すると即座に売り上げ推移や性別・年代別での構成比などが見られる。カテゴリー全体や、自社製品と他社製品の売れ行きの差を見比べることも可能だ。ツール自体はWebサイトにログインすればすぐ使用でき、グラフ画像もダウンロードできる。また、無償トライアルで操作やデータを確認することもできる。
「購買行動にはインタビュー調査では出てこない無意識のニーズが現れます。タイムリーに更新されるデータから、スピーディに分析することで、勘や経験則を超えた販売戦略が可能になります」(船越氏)
第三部では、購買行動から分析した棚作りや販促戦略などについて、ロート製薬の小玉康弘氏、ハウス食品グループ本社の吉原純氏、 ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングの渋佐奈甫美氏、True Dataの越尾由紀氏らがパネルディスカッションを実施。
渋佐氏からはノンシリコンシャンプー利用者の「リピートより新製品を重視する」傾向をデータから割り出し、季節限定品でユーザーの視線を集め、想定の4倍の商品を販売した例や、吉原氏からは食物アレルギーに配慮した製品を、効率よく認知させられるターゲットをデータから発見した事例などが紹介された。
なかでもロート製薬の小玉氏は「兆しを見つけること」がデータ活用の目的と繰り返し述べ、スキンケア商品の購買者層に目をつけた店頭づくりの例を紹介。「実は結果が良かったときにこそ分析が必要。『なぜ?』を問い続け、売り上げを高める兆しを追求することがデータ活用の要点」と話した。
データ活用の重要性が叫ばれるようになって久しい。ライバル企業に差を付けられる前に取り組みを始めたい。
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