批判するときも著作権への配慮が必要
このところネットで動画広告が炎上した事件が続いています。
もう十分に語られたので、今さら個別に批判する必要もないかなと思います。だから少し別の話をしようと思うのですが、批判記事をひと通り読んで気になったことがあります。
批判するときも、対象となる表現の著作権には配慮が必要ですよね。
そして炎上したキャンペーンのサイトは閉じたものが多いです。それなのに、サイトのキャプチャ画像を使った批判記事をたくさん見かけました。しかも立派なメディアの記事でも。
Web画面については、みんなゆるく考える傾向があるようですが、出典を明らかにして引用するのが基本です。削除されたキャンペーンサイトの画像は、出典を示しようがない。
炎上した表現だからって、その辺をいい加減に考えてはいけません。
出演したモデルさんたちの画像が「悪い例」としていつまでも使われています。批判されているから、モデルさんたちも黙っているのだろうけど。Webメディア側がまともに抗議されたら、逆に炎上するんじゃないかと思っていました。
皆さん気をつけましょうね。
話がそれましたが、もう一つ寄り道をして、本題に入りたいと思います。
マクドナルド創業者の物語から考えるブランド
映画を観ました。「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」という邦題です。原題は「The Founder」という凝縮されたタイトル。これ邦題からわかるように、マクドナルドの創業者の物語なんです。すっごい面白かった。
主人公のマクドナルド創業者レイ・クロックをマイケル・キートンが絶妙に演じています。「バードマン」も良かったけど、この映画でもはまり役でした。
で、マクドナルドの創業者はもう一人、いやもうひと組いて、マクドナルド兄弟です。兄のマックと弟のニック。彼らこそが「ファーストフード」のシステムを開発し「マクドナルド」というハンバーガーショップを始めた人たちなんです。
それまでの形態は「ドライブインレストラン」で、メニューは豊富だけど注文してから料理が来るまで時間もかかるし、車まで持ってきてくれるローラースケートガールはオーダーを間違えてばかりだった。
兄弟は徹底的にシミュレーションを重ねて、ハンバーガーの注文から30秒で渡すシステムをつくり上げたのです。さらに店舗にMの字をモチーフにした2つの黄色いアーチを施し、別々の場所の店舗でも共通のイメージを持たせました。
主人公のレイは、そのシステムに惚れ込んで、マクドナルド兄弟とフランチャイズ展開をする契約を結びます。兄弟はカリフォルニアの自分たちの店で、これまで通りのハンバーガーをつくる。その間にレイは、中西部でマクドナルドのお店をどんどん増やすわけです。
それがやがて・・・と、ここから先はぜひ劇場で見てください。どんどん野心をふくらますレイが不愉快かつ痛快という不思議な物語です。
広告業界の人にとって、この映画は格好の教科書です。レイとマクドナルド兄弟は両方とも創業者ですが、マクドナルドのつくり方を開発したのは兄弟のほうですから、レイの方を創業者と呼ぶのはおかしいかもしれません。ただ兄弟とレイは、商品の開発部門とマーケティング部門の関係に似ています。
両者とも、「マクドナルド」にすごくこだわっています。兄弟は彼らが生み出したつくり方に徹底的にこだわる。そこから踏み外してはいけないのだ、と言い張る。まるで伝統にこだわる職人のようです。
それに比べるとレイはどうでしょう。「マクドナルドは商売になる!」と見抜いただけの金の亡者にも見える。
でもレイは最後に言うのです。マクドナルドの何が良かったか。自分の名前で真似することもできた。でも、そうしなかったのはなぜか。
「マクドナルドだから。その名前が素晴らしい」と言うのです。
「マクドナルド!そこには健全なアメリカがある。2つの黄色いアーチとともにアメリカのファミリーが気軽に来てくれる匂いを持っている。マクドナルドが欲しかったのだ」とかなんとか言う。
つまりレイは、マクドナルドという名前のファーストフードシステムに「完成されたブランド力」を見出した。マクドナルド兄弟以上に、その価値に気づいたということです。だから彼は成功したし、彼こそがやはり創業者なのかもしれません。
それがブランドだと思います。原材料が集まり特別な製法でつくられ、なんらかの名前を与えられた時、理屈で説明できない何ものかとなり、オーラめいたものを発する。それがブランド。そう、ブランドは記号の寄せ集めではなく、記号が合わさったら不思議な化学反応が起こって機能以上の価値を持つ。
さてここからが本題です。炎上したWeb動画は、ブランドを表現していたでしょうか。そのブランドのための表現になっていたのでしょうか。